三十八 名前
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剤を物ともせず、しれっとカブトを救うと、ナルトは立ち去る。
ナルトに迷惑をおかけしてしまったと内心恐縮しつつ、それを億尾にも出さずに、カブトは大蛇丸の前で嫌悪感を露わにした。『暁』にいた頃からナルトが苦手だというカブトの演技に騙され、大蛇丸は二人の繋がりに気づかない。
滅多に顔を合わせないものの、時折、自身をさりげなく助けてくれるナルトにカブトが益々傾倒している事実など、大蛇丸は知らなかった。
それこそ、完全に信用させ、実験体の管理・治療だけでなく、薬物を使用した大蛇丸本人の肉体の調整をカブトに任せるまで。
大蛇丸の片腕の座に君臨したカブトの本心を、大蛇丸本人は知らなかった。
「暁のサソリは来ない」
窓から射し込む月光。
実験に熱中していたカブトは、突然降ってきた声にハッと我に返った。
【念華微笑の術】で幾度かやり取りはしたものの、実際に会ったのは久方ぶりだ。
待ち望んでいた声音に、カブトは眼鏡の奥で瞳を輝かせた。
「……頬に血がついてるぞ」
カブトが何か言う前に、窓辺に腰掛けたナルトは指摘する。
先ほどまで遺体を取り扱っていた為、頬に浴びた血をカブトは慌てて拭った。
「十日後の天地橋。其処でサソリと落ち合う手筈になっていただろう」
サソリと大蛇丸。双方をスパイしているカブトに、ナルトは確信めいた言葉を投げる。
以前、ナルトに【念華微笑の術】でカブト自身が報告した事柄だ。
何かあれば逐一報告している故、ナルトが知っているのは当然であった。
「えぇ。それがなにか?予定変更ですか?」
「サソリと木ノ葉隠れの忍びが衝突した結果、情報を漏らした。来るのは木ノ葉だ」
「そうですか…」
事前に天地橋に来るのが木ノ葉の忍びだとナルトから知らされ、カブトは眼鏡を軽くかけ直した。
衝撃の知らせを聞いても、カブトは慣れた様子で試験管を振る。
試験管の中で揺れる液体がどす黒い色から透明な色へ変化してゆく様を眺めながら、カブトは訊ねた。
「それで?それを僕に言うということは、大蛇丸様には前以って知らせて良いという事ですか?」
「木ノ葉は伏せろ。言うのはサソリだけでいい」
磨り潰した粉を丸く捏ねながら、カブトは思案顔を浮かべた。そして得心がいったように、笑う。
「なるほど。サスケくんに、僕と大蛇丸様の会話を聞かせるわけですね」
「察しが良いな」
木ノ葉の忍びが『暁』の罠ではないか、と勘繰って天地橋へ向かうのを躊躇するのを防ぐ。
その為に、あえて大蛇丸の許へ忍び込んだうちはサスケに、会話を聞かせる必要がある。
カブト自身がサソリと落ち合う手筈だったと大蛇丸に語っていることを耳にすれば、当然
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