三十八 名前
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自由に生きろと言ったはずだ」
『暁』の外套を風に靡かせる小さな子ども。
崖の上から眼下の森を俯瞰していた彼の後ろにそっと近寄ったカブトは、求めていた存在の一言に、即座に返した。
「ええ。だから自由にアナタを捜したんです」
『暁』に加入したカブトはずっと機会を窺っていた。
子どもと対面できる機会を。
サソリの眼を盗み、大蛇丸の視線を避け、そしてようやくカブトは子どもと二人きりになれた。
振り返らずの子どもの言葉に、自分を憶えてくれていたのだ、と安堵し、カブトは口許に笑みを浮かべた。
カブトの率直な返答に、子どもは振り返る。金の髪の合間から覗く瞳が訝しげに細められた。
「“根”から解放された身。何処へでも行けたはずだ」
“根”のスパイとして五大国を渡り歩いたカブト。今や、彼はノノウに殺されたと“根”は見做している。
一方のノノウも大蛇丸が糾弾したせいで、自責の念から自ら死んでいる。
“根”の命令でカブトとノノウをずっと監視していた大蛇丸の発言により、助けようとしていたカブトを自身が殺してしまったのだという真実を知り、亡くなったノノウ。
故に、あの状況で身を隠せば、カブトは自由に生きることができた。
しかしながら、よりにもよって、木ノ葉の里から抜けた大蛇丸がいる『暁』に、カブトはやって来たのだ。
何故、自ら虎穴に入ってきたのか。
理解に苦しむといった風情で、眉を顰める小柄な背中に、カブトはずっと聞きたかった問いを投げた。
「君の名を、教えてください」
カブトに本当の名を返してくれた、思い出させてくれた、アイデンティティを確立させてくれた。
その崇高な存在に、名を問う。
自分にだけ名をくれて、彼の名を知らない事実がカブトには許せなかった。
「君の…本当の名前を、知りたいんです」
カブトの切なる問いに、そこでようやっと子どもは振り返った。
緊張し、ごくりと生唾を呑み込むカブトを見据える瞳には、何の感情も窺えない。
どれほどの時間が経っただろうか。
辛抱強く、じっと待ち続けるカブトに折れ、子どもは溜息をつくと吐き捨てるように答えた。
「────うずまきナルトだ」
「……うずまき…ナルト、くん……」
その名を、カブトは大切に噛み締める。
素っ気ない態度を取る子どもの──ナルトの様子など気にも留めず、カブトは心の底から歓喜した。
同じ『暁』の外套が崖から吹き荒れる風に大きく靡く。
カブトの運命の歯車は、その瞬間から回り始めた。
「大蛇丸が僕を勧誘してきましたが、如何しますか?」
『暁』入りをして数日も経たないうちに、接触して
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