三十八 名前
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戦闘よりもある一点に釘付けになった。
「────いい加減にしろ」
刹那、大蛇丸の蛇が瞬く間に消し炭と化し、サソリの傀儡人形『ヒルコ』が完膚なきまでに粉砕された。
弾き飛ばされた毒針がカカカッ、と地面に突き刺さる。
一瞬で破壊された傀儡人形の中で、本体であるサソリが驚愕の表情を浮かべた。
同じく、愕然とした大蛇丸がすぐさま地を蹴る。
サソリと大蛇丸。両者と同じ黒衣を身に纏った存在がふわりと音もなく降り立つ。
ただ、その身体は大蛇丸やサソリに比べると随分小さく、小柄だった。
にもかかわらず、あれだけ険悪な空気を醸し出していた二人は、その存在に気圧されるかのように一歩退く。
割って入ってきた存在から距離を取り、大蛇丸は両手をあげて降参のポーズを取ってみせた。
「ごめんなさい。ちょっとしたじゃれ合いよ」
「お前らのじゃれ合いは洒落にならんだろうが」
全身を漆黒の衣で覆う小柄な人物が呆れたように肩を竦める。
フードの影から垣間見える双眸が、大蛇丸とサソリを非難していた。
その眼を、カブトは知っていた。
赤色にも紫色にも角度によって変わる、青の瞳。
ふと、突風が吹いて、目深に被っていたフードが取り払われる。
さらさらとなびく金の髪。
両頬に髭のような三本の痣があるが、それすら愛嬌に見えるほどの愛らしい顔立ちが、カブトを認めて、ほんの一瞬、驚きの表情を浮かべた。
だが、それを悟られず、彼はサソリに向き合う。
「すまないな、お前の傀儡を壊してしまって」
「ム…俺自身を壊されるよりはマシだ」
かつて本体である人傀儡の己自身を完膚なきまでに破壊されたサソリは、砕かれた『ヒルコ』から気まずげに抜け出す。
若々しい十五歳の容姿を惜しげもなく晒し、溜息をつきながらサソリは周囲を見渡した。
「あ〜あ…もっと頑丈に造らねぇとな」
傀儡『ヒルコ』の破片を見下ろして肩を竦めたサソリは「おい」とカブトに声をかける。
「『ヒルコ』の破片を集めろ」
「……………」
「おい、聞いてんのか?カブト」
「……は、はい…!すみません…っ」
呆然と立ち尽くしていたカブトはサソリの声で我に返る。
命令通り、『ヒルコ』の散らばった破片を拾いながらも、カブトの全神経と意識は突如現れた子どもに向いていた。
(やっと────見つけた…ッ)
その姿を認めた瞬間、カブトは歓喜に打ち震えた。
黒地に、赤き雲。
漆黒の外套を身に纏う小柄な人物を前にして、カブトは眼鏡をかけ直すふりをして、顔を手で覆う。
手の下に潜む顔には、隠し切れない歓喜の色が溢れていた。
「……
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