第27話 新しい夢
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上げるのも筋が違うかもしれませんがありがとうございます。井上オーナーには何かとお世話になりました。少しでも恩返しできればと気にしておりましたので」
カップを手に取り、口元に寄せるが、そこで空なことに気づいた。どうやら思った以上に話に夢中になっていたようだ。自然にお代わりを注ぐ彼に視線を向けると、窓から夕陽が差し込んでいる事に気が付いた。
「だいぶ長居をしてしまったな。今日は最後のダンスパーティーの予定だろう?私はもう少しゆっくりさせてもらうから、婚約者殿の所へ行ってあげなさい。参考にするかは別にして、パーティーの前には、淑女はパートナーに何かと意見を求めるものだ」
私がそう言うと、彼は苦笑してから配慮に感謝する旨を述べ、部屋を辞していった。この日の夕陽を私は忘れることはないだろう。もう50年近く生きて来た。夕日が沈むまでのひと時は私の余命の様でもある。大きな夢が朝日のように現れる姿を見ることはないだろう。でも朝日の到来を信じて人生を終えることは出来そうだ。不思議と亡命以来色褪せた用に感じていた日々に鮮やかさが戻った。そして月に一度、帝国亭で食事をすることが、私の数少ない習慣のひとつとなる。
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