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カーク・ターナーの憂鬱
第27話 新しい夢
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十分豊かな生活をシロンの皆さまは、されていましたから」

そう言いながらテキパキとお茶の用意を進める青年の様子を私は不思議に思った。自分たちより亡命者が豊かな生活をしている。それを不満に思わなかったのだろうか?

「8歳の頃から、家計を助けるために働き出したのですが、仕事柄、捕虜の方々と接する事が多かったのです。日によっては同盟語より帝国語を話す時間の方が長い有様で、それが回りまわって亡命者のフィアンセを持つ事につながるのですから、縁とはどうつながるか分からない物で......」

それからウーラント商会を立ち上げるまでの彼の人生の歩みを、簡単ながらも面白く語ってくれた。彼の歩みはある意味良縁に満ちている。士官学校を次席で卒業見込みである事を踏まえれば、彼の優秀さ・勤勉さが良縁を引き寄せたともいえる。ただ、辺境星域の一人の少年が、商会を立ち上げ、士官学校を次席で卒業する。まるで物語の主人公かのような成功談だ。
特徴的なのは、一方的な良縁になっていない事だ。彼を航海士見習いに推薦した井上商会は、現在では惑星エコニアのトップ商会で、中堅資本と言えなくもない規模になっている。航海士見習いとして雇った出光商会は、独立して10年も経たずに5隻の商船を運用するまでに成長した。彼を見込んで婚約者とし商会を立ち上げさせたウーラント家は言うまでもない。経済的な成功はもちろん、嫡男のユルゲン殿もハイネセン記念大学に合格し、控えめに言っても順風満帆だろう。
私自身も、第三種機密指定された彼の卒業論文と、彼が井上商会に在籍していたことの二つが重ならなければ、リスクを冒してまで面会を望まなかっただろう。この面会もお互いにとって良縁になるだろうか?

そんな事を考えながら、用意された紅茶を一口二口と飲みながら雑談に興じる。秀才にありがちな才をひけらかす所もない。今までも多くの大人たちが、彼の面倒を見たがっただろう。私もその気になりつつある。

「君のように冷静に現状を把握できる人材がなぜあんな事を?」

「士官である以上、認識しておくべき事だと判断しました。特に同期連中は優秀です。つまずかなければ将来軍上層部を担うことになります。部下に見せたい現状を見せる才も必要ですが、本気で精神論を唱えるタイプにはしたくありませんでした」

「実現を早めるには何が必要かな?」

「現実性を度外視すると、生産人口が50億人、欲を言えば70億人帝国から亡命する事です。それでも、現実的な侵攻案が立てられるのは私の孫世代になるでしょう。いろいろな歯車がかみ合えばと言う条件が付きますが」

「では、必要条件は?」

「強いリーダーの存在です。同盟は独裁化を懸念するあまり大統領制ではなく、間接民主制を採りました。結果として派閥に配慮し極端な政策を取りにくい状況です。国
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