第26話 隠される真実
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宇宙暦729年 帝国暦418年 10月末
同盟軍士官学校 校長室
カーク・ターナー
「ターナー候補生。君の卒業論文は確かに見るべきものが多いものだった。表現の自由・思想の自由も同盟憲章で保障された物だ。なので卒業論文として受け付けるし、評価も公正に行う。ただし、あの論文を広く公開する訳にもいかない。第三種機密指定とし、アクセス権のある人材以外の閲覧は出来ない形とする」
「済まない候補生、担当教官として、貴官の論文は見るべきものがあると個人的には判断した。評価も当然高いものになるだろう。ただ、任官後の事を考えると、あの内容を公表するのは、貴官に取っても好ましいのではないと校長は判断された。優秀な貴官なら、理解できると思うが......」
悩まし気な表情の校長と、困り切った表情の教官が俺に視線を向けている。そりゃ730年度次席卒業見込みの候補生が急にあんな論文をぶち上げたら、そうなるか。将来を嘱望された優秀な候補生が『数世紀耐えないと戦争には勝てない』なんて、言い出したんだからな。
「はっ。本来なら決定事項として伝達で済ませるべき所、ご配慮いただけた事、感謝いたします。また論文が公開された場合、校長や教官のような現実を知る方だけではなく、見たいものしか見ていない方や、悪意の下、曲解する方もおられるでしょう。ご心配はごもっともですし、任官前に、踏まえるべきことをお教えいただけた事、感謝いたします」
俺がそう応じると、二人は安心した様子だった。彼らからしたら、ここで俺が騒ぎ出す未来もあった。同盟憲章は表現の自由・思想の自由を保障している。民主制を取る上でそれは欠かせないものだし、悪辣なる独裁制国家、銀河帝国の打倒の口実のひとつにもなっている。それを否定するような事を軍組織が行えば、防衛戦争の大義を自ら汚すようなものだ。年相応の青臭い候補生なら、機密指定にされるとなれば反抗する可能性もあった。安心するのも無理はないだろう。
「うむ。候補生、話は以上だ。あくまで個人的な見解だが、同盟軍の末席に所属するものとして、あの論文の機密指定が解かれ、議論の材料になるような将来が来てほしいと、私は思っている。ご苦労だった」
校長の言葉に応じる様に敬礼をして、校長室を後にする。廊下に出ると、卒論を書くにあたって色々と議論した連中が、気もそぞろに集まっていた。校長と教官がホッとしていたのも、俺だけじゃなく、この連中も一緒に騒ぐ可能性があったからだろう。今まで切磋琢磨していた成績上位者が、一気に問題児軍団になったようなものだ。相当悩んだだろうから、久しぶりに安眠できるのかもしれなかった。
「どうだった?」
「高評価はするが、機密指定になるそうだ。お前らも、あの論文に関しては思う所があるだろうが、堪えてほしい。少し自分の立場を忘れて
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