第25話 現実を知る漢
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出している。一緒に亡命した二名の同志は、少佐待遇で特命担当となり、フェザーンにむかっている。こちらは待ちの状況だ。既に同盟には幻滅しつつある。ただ、今更情報の流し役に徹するのもつまらなかった。情報部を通じて提供された詳細なデータを閲覧していく。機密アクセス権を得た事もあり、閲覧できるデータは膨大だ。
「ん?これはどういうことだ?」
紅茶を片手に数日かけて諸々のデータを閲覧する中で、私が引っかかったのは捕虜収容所のデータだった。数ある収容所の中で、惑星エコニアの収容所だけが捕虜から住人になる傾向が高かった。よくよく詳細を確認すると、エコニアには、少額ながら開発支援金が付き、インフラ開発を捕虜たちが主導して行っている様だ。感謝の気持ちもあるのか?開発の主幹をする井上商会はわざわざ帝国風の食材を差し入れていた。
捕虜となってまで帝国に尽くす元同胞達への哀れみや、負け戦に引き込んだ元部下たちへの謝罪の念もあったのだろうか?フォルセティ星域会戦で捕虜となった10万人の捕虜の収容先をエコニアにし、収容所を15万人規模にする旨を上申した。『部下たちも一刻も早く帝国の悪夢から解放したい』と添えれば、同意を得るのは簡単だった。
情報部が所有する亡命系資本に偽装したダミー会社を通じて、帝国風の食材を井上商会に提供する事も始めるのだが、それは数週間先の話になる。帝国と言えば貴族的な文化が代表的だが、帝国の平民と同盟の開拓者たちが融合した、新しい文化が花開く可能性も考えた。もっとも私の存命の間には難しい事だろう。
だからこそ、結果を知らずに済む新しい夢が見つかったようで、私は変な喜びを感じていた。もっと大きな夢を私は見つける事になるのだが、そうなるまでにもう少し時間が必要となる。
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