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カーク・ターナーの憂鬱
第25話 現実を知る漢
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言う扱いになります。情報部部長は少将を当てることに事になっており、お互いにやりにくいだろうとの判断がありました。それだけ軍上層部も期待をしているという事でしょう。ご理解頂ければ幸いです」

「ありがたいことだ。もちろん私達の亡命に当たって、大佐の尽力があった事は忘れていない。今後の私に期待される役割も踏まえれば、亡命の事実もなるべく秘匿されるべきだ。当然私の生存を知る者は少ない方が良いだろう。情報部への報告は大佐に窓口をお願いできればと思うが。どうかな?」

「ありがとうございます。そうしたお気遣いを頂ければ、情報部も色々とお役に立てるでしょう。人員の方も、統合作戦本部と情報部から身元の確かな者を、少数ではありますが提供できるでしょう。予算も機密費から出せます。今後もよろしくお願いします」

そう言って敬礼すると、大佐は私に割り当てられた分室を後にした。亡命時に提出した旗艦から情報を抜き出した光ディスクも彼の功績になっているはずだ。近いうちに昇進し准将になるだろう。情報部長が少将であるなら、彼の情報部内の影響力もかなりの物になるはずだ。お互い良い関係を続ける価値はあるだろう。
地下駐車場からセキュリティゲートを通り、情報部専用のエレベーターを使い、さらに情報部独自のセキュリティゲートを通過した先に、この分室は存在する。中将待遇で予算もついた。同盟の期待の表れと言ってもよいだろう。

「ふぅ」

待遇面では不満はないが、大佐の気配が消えると同時にため息をついた。光ディスクの存在もあり、亡命希望者として保護されてから、同盟の情報には簡単に触れることが出来た。正直、私が思い描いていた理想の国とは残念ながら言えないだろう。ダゴン星域会戦の同盟軍の勝利をきっかけに流入した帝国からの亡命者は、必ずしも同化しているとは言えない。帝国の軍部系と政府系貴族の争いを見るようだった。
建国の地であるバーラト星系は、全人口の30%に満たないにも関わらず、税負担額を理由に代議士の議席枠の過半数を押さえている。結果として、増え続ける国防費を差し引いた予算の多くは、バーラト系のインフラ維持に費やされ、地方星系の平均収入は、ギリギリ貧困層とは言えないレベルだ。これも既視感を覚えた。予算を理由に、帝国でも辺境星域の開発を切り捨てていた。役者は違うが同じ劇を見ているようで、私の中の理想の国への憧憬は、既に色褪せつつあった。

「何のことはない。知らなくてよいことを更に知ってしまっただけか」

シロン産の紅茶を飲みながら、私はまたため息をつく。自分の中で勝手に理想国家を夢見、夢が覚めれば現実に引き戻される。既に経験済みの事だった。とは言え、組織の同志の為にも、自身の役目を投げ出す訳にはいかないだろう。必須なのはミヒャールゼン達との連絡手段の確立だが、それは既に動き
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