第25話 現実を知る漢
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。とてもじゃないが今の同盟にそんな経済力はないな」
「それだけじゃないぞ。帝国の250億近い人口のうち、半分はまともな教育を受けていないだろう。同盟の戦争の勝利条件は皇帝の首を取ってお仕舞じゃない。彼らが経済的に自立するまで援助し、教育を施し、地方自治組織を立ち上げ少なくとも星系単位で民主制の運営が出来るようにすることだろう?計算しなくても天文学的な予算が必要になるのはイメージできる。今の同盟の財布じゃとても無理だ。最低でも同盟の人口が500億、贅沢を言えば800億は欲しいな。そこまでいけば現実的な侵攻計画が立てられるはずだ」
静まり返った部屋に誰かが生唾を飲んだのだろう音が『ゴクリ』と響いた。まともに教育を受けていない民衆を地方自治可能な所まで支援する。それこそ数十年単位で継続的な支援が必要になるだろう。ターナー風に言えば、採算が何時とれるか分からない案件だ。経済的には検討の土台にすら上がらない案件だろう。
「俺が任官10年で退役してビジネスに力を入れたがる気持ちもわかっただろ?戦争に勝つには同盟の財布を少しでも大きくしないと無理だ。しいて言うなら、帝国から50億人くらい生産人口が亡命してくれたらとかも考えたが、そこまで行くと夢想のレベルだしなあ......」
義弟の徴兵リスト順位を下げる為に任官したと公言して憚らないターナーに思う所がある候補生も少なからずいた。ただ、確かに戦争に勝ちきるには、それこそ数世紀単位で同盟が発展しないと難しそうだ。
「話し過ぎたかな?ただ、軍のお偉いさんになるんだからこれ位は認識しておかないとな。んじゃ、ターナーの経済講座はここまでだ。そろそろ失礼するぞ?」
肩をすくめる所作をした後、ターナーは席を立って廊下につながる通路に向かう。
「ターナー。軍にはお前のような人材が必要だ。退役は40歳にしろ。それまでに俺は宇宙艦隊司令長官になる。俺の職権の及ぶ範囲でウーラント商会を優遇してやる。どうだ?」
部屋を出ていくターナーの背中に向かってアッシュビーが言い放った。
「うーん。俺の10年で軍の利権が買えるなら安いもんだ。期待しないで待っておくとするか。頼むぜ、アッシュビー司令長官殿」
そう言って、敬礼するとターナーは部屋を出て行った。ターナーもターナーだが、アッシュビーもアッシュビーだ。ターナーが出て行った扉に視線を向けたまま満更でもない表情のアッシュビーを横目に、私を含めたほかの面々はなんとなく肩をすくめるしかできなかった。
宇宙暦728年 帝国暦417年 8月末
惑星ハイネセン 統合作戦本部
マルティン・オットー・フォン・ジークマイスター
「閣下は中将待遇で、情報部の分室をお任せする事となります。亡命が帝国に露見する事を防ぐため、統合作戦本部の特命班と
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