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カーク・ターナーの憂鬱
第25話 現実を知る漢
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ていたからな」

アッシュビーが不愉快そうに続ける。彼の父上は軍需産業の役員だし、母上は代議員だ。政治家との面識もあるのだろう。年々要求額が増える国防費は国庫にとって大きな負担になっている。国防族と財務族の関係は、不倶戴天の敵と言っても過言ではないだろう。帝国でも似たような状況なのだろうか?それでも、国民を危険にさらし、リスクを承知しながら無謀な作戦案を実施させることなどあり得るのだろうか?

「まぁ、同盟も一定の時期に出兵する事が多いからな。あまりよそ様の事は言えないかな。それに今の皇帝陛下は大の女好きなんだ。俺がフェザーンに行った5年前でも数千人を後宮に納めさせていたらしい。そのお相手が忙しくて、統制がとれていないのもあるんだろうな」

ターナーが揶揄する様に続けた。確かに選挙が近くなると支持率向上のために出兵案が出されるのは事実だろう。それにしても数千人?私はファネッサひとりに四苦八苦しているのにすごいものだ。敵国の頭目とは言え、畏敬を感じてしまう。いや、頭を切り替えよう。

「ターナー。という事は出来る皇帝が即位すれば危険だということか?」

「ああ、実際コルネリアス1世の例もある。元帥杖を乱発するおちゃめな所を除けば、十分に同盟を追い詰めただろ?そもそも計算してみたが、俺達の時代に帝国との戦争で勝つのは不可能だ。同盟軍全将兵がブルースレベルに優秀なら可能性があるかもしれないが......」

「全将兵がブルース?それこそ悪夢だな。命令を聞かんから軍組織が崩壊しかねんぞ」

ウォーリックが冗談で返すが、ターナーの発言は笑って流せる内容ではなかった。

「そんな怖い顔で見つめるなよ。同盟の戦力は8個艦隊、今期の予算で艦隊整備費が計上されたから来期には9個艦隊。各種星間警備隊をかき集めれば2個艦隊はできる。つまり持ち駒は11個艦隊だ。ここまでは良いか?」

反応を確かめながらターナーは話を続ける。

「一方で、帝国は正規艦隊が18個艦隊、貴族の私兵や各種星間警備隊を含めれば25艦隊は持ち駒にできる。2倍以上の戦力を持ってるのに押し切れないのはなぜだと思う?俺たちは士官候補生なんだから、士気の差とか司令官たちの能力とか、そういう兵卒みたいな答えは言うなよ」

「距離の防壁か?グエン・キム・ホアの言葉だったな」

「そうだブルース。補給線が短くて済む分、同盟は補給を含めた再戦力化が早くできる。行ってみればイゼルローンとフェザーンの両回廊を挟んでそれぞれ要塞を攻め合っている感じだな。拠点攻撃の基本は攻勢3倍論だ。現状の同盟の戦力から、帝国が攻め込んで勝ちきるには33個艦隊必要だ。だから一時的に押されることはあっても俺達は押し返せてる」

「それを逆に当てはめれば、戦争に勝ちきるには、75個艦隊必要なことになる
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