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カーク・ターナーの憂鬱
第25話 現実を知る漢
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宇宙暦728年 帝国暦417年 8月末
同盟軍士官学校 戦術シミュレーター棟
ファン・チューリン

「帝国軍も大したことはないな。これでは負ける為に出てきたようなものだ。検討しても学ぶべきところがあるとは思えんな」

「捕虜の数もかなりの数だと聞く。フェザーンとの航路を断つという観点ではアスターテ辺りに直進してくるより工夫したとは思うが、補給線が伸びすぎてリスクも大きい。投機的作戦だったのだろうか?」

呆れた様子で辛めの評価をくだしたアッシュビー。それでは議論が進まない。私はあえて論点になりそうな部分を指摘したが、検討するにはどうもちぐはぐだ。まるで帝国軍に勝つ気がなかったかのように感じるのは、同席している面々も同じだろう。

「帝国軍の首脳部は、もしかしたら自国の経済を理解していないのかもしれないな」

そんなターナーの言葉に、同席しているメンバーの視線が集まった。この場にいるのはアッシュビーを始め、ターナー、ジャスパー、ウォーリック、ベルティーニ、コープ、ローザス、そして私の8名だ。なんだかんだランチを一緒にしたり、戦術シミュレーターで切磋琢磨したり、ダンスパーティーで羽目を外したりする中で、一年目はそうでもなかったが、自然につるむ事が多くなった面々だ。フォルセティ星域の戦闘詳報がデータベースに上げられたのを機に、検討会をしようと言う話になり、現在に至る。

「ふぅ。どうやらこちら側の自称未来の艦隊司令達も把握していないようだな」

そう呟きながら、ターナーがフェザーンを中心とした交易の内容を簡単に解説し始めた。

「金額ベースで言えば、帝国からは各種嗜好・工芸品や希少鉱石。同盟からは民需用の消耗品・各種機械製品が主力なんだ。ただ、重量ベースで置き換えると、同盟の主力輸出品は穀物になる。フェザーンにでも行けばもっと詳細な分析ができるだろうが、貴族領では鉱山開発は積極的でも、農業は後回しなんだろう。不作に備えて政府備蓄に輸入された穀物が周り、最悪餓死するような事が無いようにしているんだろうな」

「ならフェザーンに穀物を供給している同盟との航路が遮断されれば、むしろ帝国が困る事になる。なぜこんな作戦が実行されたんでしょう」

「その点には心当たりがあるぞ。帝国には軍部・政府・在地領主の3派閥に分かれている。余程の事でなければ、それぞれの領分に口出しはしないからな。それに粗が目立つ作戦案だ。実施しても失敗の可能性が高いと判断して無視した可能性もあり得る」

誰もが思う疑問を提起した私に、貴族に詳しいジャスパーが答えた。

「言われてみれば、同盟も似た所があるだろう?派閥の件じゃないぞ?国防委員会と財務委員会は毎年予算のせめぎ合いをしている。必要性は理解するが、国防費が膨大過ぎると面識のある財務委員が漏らし
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