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カーク・ターナーの憂鬱
第24話 夢見た漢
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属を明らかにせよ。さもなくば攻撃する。』

『動力を停止する。攻撃は控えられたし。繰り返す、動力を停止する。攻撃は控えられたし。こちらは帝国軍ジークマイスター艦隊旗艦所属のシャトルです。貴国への亡命を希望します』

パランティア星域で口実を設けて旗艦をシャトルで立ち、そのままアスターテ星域へ向かって10日あまり、なんとか同盟軍の哨戒網に入る事が出来たようだ。

「閣下、事は成りました。おめでとうございます」

「うむ。短いようで長い10日間だった。君たちの尽力に感謝する」

そういって敬礼すると、感極まったのか、副操縦士は涙を浮かべた。視線を向けるとこちらを見ていた操縦士も、涙を浮かべている。彼らにとっても、理想の国家への10日間の旅路は、緊張に満ちたものだったようだ。同志たちを代表して、私を送り届けるという意味では、もしかしたら私以上にプレッシャーを感じていたのかもしれなかった。

キャビン前部の操縦席越しに見える同盟軍の駆逐艦の艦影が大きくなるのを横目に、今後の事を考えていた。私が同盟へ亡命した事は、おそらく帝国軍には気づかれていないはずだった。艦隊を率いて参加したフォルセティ星域での会戦は、出征軍首脳部にとっては予想外に、有力な敵との遭遇で始まった。ミヒャールゼンも情報を流しただろうし、交易に支障が出る状況をフェザーンが許すはずもない。私にとっては想定内だ。
出征軍の分艦隊司令の多くが、士官教育も受けていない爵位持ちの貴族の子弟、私たちは『名ばかり少将』と呼んでいたが、そういう人材が多数を占めていたのも私にとってはうまく働いた。領民を殴りつける感覚で同盟軍に突撃しようとする旗下の彼らを、敢えて好きなようにさせたのだ。そうなれば他の艦隊の名ばかり少将達も動き出す。舐めてかかった素人の突撃を、本職の同盟軍はきれいに粉砕してくれた。

戦力的に劣勢になった帝国軍は撤退を開始する。艦列を立て直し、パランティア星系に入ったあたりで、出征軍総旗艦での会議を具申した。爵位持ちの子弟を戦死させたとなっては善後策を検討しなければならない。後は同志とシャトルに乗り込み、ちょうど艦隊と艦隊の間に入ったあたりで、用意していた時限爆弾をハッチから放出し、慣性航行に移行する。
観測班が分析すれば、おそらく私たちのシャトルが何らかの事故で爆発したように見えるだろう。撤退中の敵国領域で、救援を出すのも困難なはずだ。慣性航行を24時間続け、その後進路をアスターテ星域に向けた。あれから10日間。思い返せば人生で一番長い10日間だったかもしれない。

「私は亡命が受け入れられれば、同盟軍に協力する予定だ。だが、夢見た理想の国に我々はついに到着した。願わくば貴官らの協力が欲しい所だが、理想の国で新しい人生を歩みたい気持ちもあるだろう。亡命受け入れに際して、
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