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カーク・ターナーの憂鬱
第24話 夢見た漢
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は今まで聞かなかった事を聞いてみたいと思った。男爵家の分家とは言え帝国騎士の身分もある。46歳で大将ともなれば、帝国では成功したと言えるキャリアだ。それを放り捨てる動機は一体なんなのか?亡命が成功すれば、もう会って話す機会もない。そうした状況も、背中を押したのかもしれない。

「動機か......。言葉にするには難しいが、父親への反抗心と、共和主義の理想社会を見てみたいという2点に尽きるかもしれんな。父は社会秩序維持局の職員でな、職務に精励し何度も表彰されたが、家庭では暴君だった。幼いなりに私は共和主義者どもが父の鼻を明かして、逃げおおせてしまえと思った記憶がある。暴君の父から逃げたいと考えていた自分と重なったのかもしれんな。
物心つく頃には、自然と同志のように思っていた共和主義者に関心を持った。幸い、我が屋には共和主義者から没収した発禁書が多数存在したからな。理解するのにそう苦労はなかった。帝国は貴族制の膿に犯されている。何とかしたいと思っているうちに同志のような存在が増え、ここまでになった。マンフレート2世陛下の治世が長くなっていれば、我々もこんな苦しみから解放されていたかもしれんが......」

「マンフレート2世陛下ですか。同盟で成人され開明的なお考えをお持ちだったと聞いております。まだ成人前でしたが、お噂は聞いておりました」

空になった2つのグラスにワインを注ぎ、献杯をする。陛下の治世が長いものになっていれば、もしかしたら貴族社会の膿のような醜さは排除され、もっと生きやすい帝国になっていたのだろうか?

「そのような陛下を育てた社会だ。それだけでも死ぬ前に見ておきたい。手土産も用意できたし、我々が協力すれば、同盟に十分貢献できるはずだ」

「確かに。敗戦が続けば鼻持ちならない貴族層が軍から減り、下級貴族や平民を実力主義の下、抜擢することもできるでしょう。そうなれば彼らの発言力も増します。爵位が無視される事は難しいでしょうが、爵位だけが重視される今の有り様も変わるでしょう。閣下の動きは、帝国にとっても無駄にはなりますまい」

その後も様々な話をしたが、お互いに貴族社会の不条理や組織の話はしなかった。そうした物に触れることのない社会をつくる。そんな思いをお互いに察していたのかもしれない。ジークマイスター大将は年明け早々に出征されたが、私は見送りには行かなかった。もう送別の儀は済ませている。願わくば、亡命が成功することを......。私の日課に、成功を祈る時間が追加されるのは、もうしばらく後の事になる。


宇宙暦728年 帝国暦417年 4月末
アスターテ星域 外縁部
マルティン・オットー・フォン・ジークマイスター

『所属不明艦へ、動力を停止し所属を明らかにせよ。さもなくば攻撃する。繰り返す、動力を停止し所
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