第24話 夢見た漢
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宇宙暦727年 帝国暦416年 12月末
惑星オーディン ミヒャールゼン男爵邸
クリストフ・フォン・ミヒャールゼン
「いよいよ実行する機会が参りましたな。決行される御つもりですか?」
「そのつもりでいる。こちら側は貴殿がいれば大丈夫だろう。それに私の旗艦にも数名同志が配属されている。戦況にもよるが、シャトルで艦隊を離脱するのはそこまで困難ではないはずだ」
「それにしてもフォルセティですか。軍首脳部は叛徒ども以外は帝室に忠誠を誓うものだと疑っておられないようで。まあ、おめでたい限りです」
「そう言うな、侯爵様、伯爵様と崇められて育つのだ。せいぜい経験するのは貴族同士のじゃれ合い位であろう?同盟が防衛主体で戦争を進める以上、彼らにとっては自領の反抗的な領民を殴りつける感覚なのだ。だからこそ、我々の組織もうまく動けるというものだ」
お互いにグラスを掲げ、乾杯をしてワインを流し込む。目の前に座る一回り以上年上のジークマイスター大将に声をかけられ、スパイ網を作り始めてどれ位の時間がたっただろうか?社会秩序維持局の目を掻い潜りながら拡大していく組織は、俺に暗い喜びをもたらしてくれた。同志ひとり一人の動機までは深くは聞いていない。
私の場合は、親族との財産争いがきっかけだった。権利を声高に主張し、後ろ盾の意向を傘に着て、財産をむしり取ろうとする。何が貴族だ。選ばれし者などと鼻にかけてはいるが、法的根拠の有無はあれど、やっている事は強盗に等しい。そう考えたら、疑うことなく帝室に忠誠を叫び、同盟の討伐など容易だと叫びながらしたたかな反撃を受ける連中を見ていて気分が良かった。
鼻につく連中を叩きのめし躾け直す。時には挫折すらさせてくれる同盟はむしろ私の味方だった。国内に諜報網を作り、情報を同盟に流せばもっと奴らを痛めつけてくれるだろう。多かれ少なかれ同志たちは似たような理不尽や貴族社会の醜さに触れ、暗い喜びを感じながら、せっせせっせと帝国の足元に泥沼を作ろうとしてきた。
「フォルセティ星系が帝国軍の手に落ちれば、同盟とフェザーンの交易に支障が出るでしょう。メイン航路から数星系の所に敵軍がいれば、商船の航行などおぼつきません。軍首脳部からすれば同盟の経済に打撃を与えるつもりなのでしょうが、フェザーンとしても交易は命綱。何かしら動くでしょうが、こちらからも情報を流すようにいたします」
「そうだな。大敗しては私が戦死しかねんから、適度に頼むぞ。退路はイゼルローンしかないからな。パランティア辺りで艦隊を離脱し、アスターテまでいけば同盟の哨戒網に引っかかるだろう。まぁ、世の中には知らない方が良い事もある。彼らはそれを知らず、我々はそれを知っている。それだけの事だろう」
やや遠い目をしながら話す、ジークマイスター大将を見ていて、私
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