第22話 その頃 船長とオーナー
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ジ頭の縁で、ある商会がエコニア経由の定期便を運航してくれましてね。そのお陰もありまして」
「そうかい。そういえばあのオレンジ坊やが、士官学校に入学したんだもんなあ。エコニアも捨てたもんじゃないね。これで第二人造湖が出来ればもっとエコニアは良くなる。子供はともかく孫世代には首都星系の大学に行く人も増えるかもしれない。夢みちゃうねぇ」
農業用機械とメンテナンス部品を受け取りに来た常連の中年男性が嬉しそうに話しかけてくる。世間話をするのはいつもの事だが、人造湖の新設が動き出してから、明るい話題が増えた。人造湖が完工したらそのまま灌漑設備と道路の整備。そして増産した穀物で酪農業と酒造業が動き出すだろう。そうなれば、寄航する商船もさらに増えるはずだ。常連が夢と言ったが、孫世代にはハイネセン記念大学や、国立自治大学に進学するのも、そこまで難しい事ではなくなるかもしれない。
「ありがとうございます。またお願いします」
嬉し気に農業機械を輸送用トラックに積み込み、手を振ってからトラックに乗り込む常連を頭を下げながら送り出す。お客の景気が良けりゃ、こちらも自然と明るくなるってもんだ。今までは半年待ちでやっと入荷した商品を、更に価格交渉されることが多かった。お互い知らない仲じゃない。懐事情も分かってはいるから無下にもできなかったが、景気が良くなった事もあって、そういう事も無くなった。隣のマスジットに出店する為にしていた資本蓄積を使って、エコニアの倉庫を大幅に拡充し、冷凍冷蔵用の倉庫も新設した。降ってわいた好景気に対応できたのは、井上商会だけだった。
「オーナー、戻りました。収容所の皆さん、喜んでましたよ。でもせっかく入荷した帝国風の食材を差し入れちまうなんて......。なんか勿体ないような気がしちゃいます」
「気持ちは分かるがな。これも投資よ。懐かしい帝国風の食材を食べれば、連中も頑張って働こう!って思うだろう?それに、何人かが、エコニアに骨をうずめても良いって考えるかもしれねえ。収容所はここだけじゃねえんだ。捕虜のまんまじゃ定員があるが、住人になっちまえば定員はないからな」
「確かに住人になってもらえたら嬉しいですね。俺ももっと愛想よくします!」
そう応じると、配送役の新入りが伝票を置いて裏口から倉庫に戻っていく、次の配送に向かうんだろう。収容所内の売店を経営していたし、第二人造湖開発事業の主幹になっている事もあって、捕虜と接する事も多かった。一括りに捕虜と言っても、中には業界の専門職のような技能を持っている人材もいるし、多くの人材は、農業や酪農の経験者だ。事業計画の太枠は首都星から降りてきたが、実際に現地調査と設計図の細かい調整を行ったのも、収容所の捕虜たちだった。首都星系では高給取りに属する人材が眠っていることに、今更なが
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