第22話 その頃 船長とオーナー
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宇宙暦727年 帝国暦416年 3月末
エルゴンーエルファシル航路上
キャプテン佐三
「この航海が副長として最後の航海だと思うと、なんだか変な気持ちでさぁ」
「ハイネセンに戻れば、船長になるんだ。雇われとは言え、責任重大だぞ?頼むぜ」
苦笑する副長を横目に、エンブレム号はエルファシルへの航路を順調に進んでいた。ターナーのお陰で亡命融和派とのパイプも太くなり、帝国語に堪能な航海士見習いも確保できた。ウーラント商会の案件もまずお声が掛かるのはうちだし、ウォーリック商会からも前以上に声をかけてもらえるようになった。
引き合いが多いのは嬉しいが、一隻でこなせる案件数でもない。そこで関係各所に出資をお願いして、中古ながら2隻目の商船を購入し、一部システムのアップグレードと、メンテナンスを進めている。エルファシルからシロン経由でハイネセンに戻る頃には、運用可能になる予定だ。
「為せば成るとは言わねえが、副長歴もそれなりにあるんだ。フェザーン方面を任せるんだからよ。頑張って稼いでくれよな。あっちはエコニアの案件もあるし、面白い事になるはずだ。きっと良い経験になる」
そう俺が笑顔で言うと、副長は安心したようだ。ただ、1週間おきに不安げにしやがる。こいつも手がやけるぜ。とは言え気持ちも判る。俺もウォーリック商会で雇われ船長になった時は、身が引き締まる思いがした。その分、独立して商船持ちになった時は業務面では心配はなかったが、今度は資金繰りっていう悩みが増えた。商船持ちになるのは夢だったが、創業期の資金繰りに悩む姿を横目で見ていた副長は、独立までは考えていないかもしれなかった。
「そういう意味では、ウォーリック商会はやっぱりすごいわな」
艦長席の前に据え付けられたモニターに視線を向けつつ、俺は改めてお世話になったウォーリック商会の独立支援の手厚さに舌を巻いた。零細資本から脱皮しつつある出光商会には、まだそこまでの余力はない。ただ、今関わっている案件が成功し、モデルケースになれば、時間はかかるだろうが中堅資本くらいにはなれるだろうし、独立支援を行う余裕も出てくるはずだ。
「これもターナーがつないでくれた縁か。こんな案件に関われるとは思わなかったなぁ」
エンブレム号の船倉には、シロンで積み込んだ帝国風の食材と最新式の醸造設備、農業機械を積んでいる。テルヌーゼンで成功したビジネスモデルを、前線へ行く前に同盟軍が寄航するエルファシルでいよいよ始めるからだ。エルファシルの人口は200万人を超え、小さいながらも駐屯地もある。十分成功は見込めた。今後の計画では、エンブレム号はハイネセンーシロンーエルファシル間をメインに運航予定だ。そして新しく購入した商船は、ハイネセンーシロンーエコニアーフェザーンを軸に運航する。
同盟の中でも田舎
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