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カーク・ターナーの憂鬱
第21話 シミュレーター
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とって、同期は自分の下位者でしかなかった。下手したら教師陣すら相手にしていなかった事も踏まえれば、そもそも励まされる経験も皆無に等しいだろう。

「一人で考えても仕方ないんじゃないか?どうせならランチでも一緒に食べてみたらどうだ?それとも派閥が気になるか?」

「派閥の事はどうでもいい。ただ奴に負けたような気になるから決心がつかないだけだ」

まぁ、ブルースの考えもなんとなく解る。自分が目的は何であれ、ランチを一緒にしたいと思う存在も今までいなかったんだろう。誘われる側であり、質問される側であり、羨望の視線を向けられる側だった。例年は俺達が属するバーラト原理派の学生が上位を占めるが、今年はそうでもない。ターナーとファンは辺境出身、ジャスパーとベルティー二は亡命系、ウォーリックは融和派の雄であるウォーリック商会の出身だ。バーラト原理派に囲まれて育ってきた俺たちにとって、よく言えば新鮮、悪く言えば慣れない環境とも言える。
それに良くも悪くも唯我独尊な所があるブルースは、先輩や同期から必ずしも好まれていない。優秀なだけに一目置かれているが、学年を跨ぐ問題はまずターナーの所に行くし、同期の間の問題は世話好きで温和なローザスの所に行く。人数が多いバーラト原理派のリーダー的な存在ではあるが、今までのような文字通り『主役』という立場にはなっていない。本人も気づいていないのかもしれないが、妙なやりにくさを感じているんだろう。

「あちらさんは勝ったなんて思わないとは思うがなあ」

「それも分かっているが、気持ちの問題だからな......」

そう言いながら、空になった紙カップを握りつぶすブルース。仕方ない、俺が一肌脱くとするか。ローザス辺りに相談すればうまく事を運んでくれるだろう。優秀な奴だし、いずれは同盟軍を背負う人材だ。多少はおせっかいを焼くのも、将来の同盟軍の為だからな。俺達はカップをゴミ箱に投げ入れ、観戦室を後にした。そう言えば、ターナーとの対戦も近い。さすがに2時間シミュレーターに籠るのは骨が折れる。ファンの時同様、手堅い手の打ち合いになるであろう対戦を考え、俺は小さくため息をついた。
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