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カーク・ターナーの憂鬱
第21話 シミュレーター
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いる事は、私の密かな悩みだった。でも一歩引いてみれば、我が軍は勝つ必要はないのだ。負けなければ、帝国は引き返すしかない。

「まぁ、目立つ連中は攻勢型が多い。戦争って意味では、国民の為にも勝利は必要だろうが、勝ちに行くって事はリスクを負うってことだろ?それも必要なんだろうが、リスクを抑えて負けない戦いが出来るファンは、きっと必要とされるよ。司令官の立場で考えたらわかるだろ?」

「確かに。部下全員がジャスパーだったら、安心して良いのか不安に思うべきなのか悩みますな」

ボソッと漏れた私の本心は、思った以上に彼の笑いのツボにフィットしたらしい。『笑える表現だ』と言いながら、彼は私の肩を叩いてきた。ジョークを言ったつもりはないのだが。

「やってみて思ったが、守勢に徹するのは精神力が問われるな、何度も攻勢に出たいと思った。実戦でここまで粘れるかは、正直疑問だな。良い勉強になったよ。自分の性に合う戦術を探しているんだが、なかなかな」

彼はそう言いながら肩をすくめた。対戦相手の得意戦術に合わせていたのはそういう意図もあったのか。名前が出たジャスパーとの対戦では、お互い大攻勢をかけあい、わずかな損耗率の差で勝敗がついた。対戦時間はわずか15分。首席のアッシュビーとは定石から外れた艦隊軌道をお互いに取り、最終的に本拠地を数秒の差で陥落させた事で、勝負がついた。教官たちもどう評価をすべきか頭を悩ませたという話が、士官学校のニュースに疎い私にも漏れ聞こえている。

「なんとなくだが、ファンの気持ちも判った気がするよ。ほら、俺も辺境星域出身だからさ」

悲し気に話す彼が意外だった。別にハイネセンを始め、人口密集地帯の住民たちが冷たいなどと言うつもりはない。ただ、入植し開拓を住人一丸となって進める辺境星域では、町全体が家族みたいなものだ。戦死の報に触れれば、町全体で悲しむ。血はつながっていなくても、兄弟姉妹みたいな感覚で成長して行くのだ。自分では把握できていなかったが、なるべくリスクを抑えて、損害を減らす戦い方を好むのは、私のそんなバックボーンも影響しているのかもしれなかった。

「だいぶ時間を取らせたな。まぁ、嫌じゃ無ければランチも付き合ってくれ」

そう言い残すと、ターナーはストレートティーが入っていたカップをゴミ箱に投げ入れ、戦術シミュレーター棟を後にした。ランチの誘いはうれしいが、同期の中でも目立っている彼の周囲には、ジャスパーやベルティー二と言った攻勢系の同期だけじゃなく、何かと芝居がかったウォーリックなど、私が苦手とする連中もいる。だだ、それも良いかと思った。少しでもコミュニケーションの面で改善できるかもしれない。
それにあの連中がいる所にはローザスがいる。同期の間での揉め事を仲裁するのは、首席のアッシュビーでも次席のターナー
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