第20話 合格発表
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で手をつなぎながら歩いていると、婚約者であるターナー様がタブレットを取り出し、メッセージを確認するとホッとしたようにつぶやきました。
「なんて言うかなぁ。普段一緒にいる連中が、良くも悪くも目立つ連中だ。隣の芝生は良く見える......。じゃないけど、ちゃんと良さを持っているのに、それに気づいていない生徒をみているようだったから。これで少しは自信をもってくれればなぁ」
「カトリナさんもおられますし、きっと大丈夫ですわ」
それもそうだな......。と苦笑すると、視線を戻して歩き始める。私たちの間で両手を繋いでいたユルゲンも嬉しそうだ。ユルゲンはアルフレッドさんに良くして頂いている。自分の事のように思っているのだろう。
「ちなみに次席だったそうだ。言った通り不合格の心配はなかったよ」
からかうような表情で伝えてくる婚約者に、『おめでとうございます』と返す。今日は士官学校の合格発表の日でもあった。そちらに行くべきではと伝えたのだが、私の合格発表を優先して下さった。嬉しい反面、婚約者だからと言って、自分を犠牲にされているのではとも思う。ウーラント商会の事が無ければ首席も取れたのではないだろうか......。
「クリスティン。何を考えているか分かるが、気にするな。ウーラント家に見込まれなければ、あのまま航海士になり、良くて下士官待遇で徴兵されていた。それに比べれば俺の人生はだいぶ拓けたものになっているよ。少なくとも知り合いの子弟の誕生日にシルバーカトラリーを贈れる身分ではなかったさ」
微笑みながら声をかけてくる未来の夫。兄貴分のトーマスさんが遺されたタイロンさんの一歳の誕生日をきっかけに、ウーラント家は知り合いのご子弟にシルバーカトラリーをお贈りすることになった。帝国風の贈り物で正直良いのかとも思ったが、誕生日ごとに一組のカトラリーと手紙を添える風習をターナー様が気に入り、この形になった。エルファシルのタイロンさん宛だけでなく、エコニアの義妹、そしてトーマスさんの弟君にも、私と連名でお贈りしている。
ウーラント家が同盟で根を張るための起業も、そしてユルゲンが徴兵を避けるための士官学校入学も背負ってくれた。その負担を少しでも減らせればと、本当は士官学校に隣接した音大に行きたいけど、市立経大に進路を決めた。お父様も会話はまだまだだが、同盟語の読み書きを覚え、財務経理業務を担うようになっている。亡命を決めた時に見えたウーラント家の将来像は、良い方向に大きく舵を取り、順調に進んでいる。そして帝国風の価値観も良いと判断すれば受け入れて頂ける。お父様が良い意味で帝国騎士としての矜持を保っていられるのもターナー様のおかげだ。
「もう、そんなことではありませんわ。いつか私たちの子供と、こうして手を繋いで歩きたいと思ったのです」
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