第19話 青春
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に向けて進んでいく。カネッティさんは今頃、少量ながら生産が始まった帝国風の黒ビールを売り込むべく、歓楽街で汗をかいているはずだ。不思議なことに、仕事も趣味も食べ飲み歩きのカネッティさんは、かなり細身だ。その体格のどこに入るのかと不思議な位、うまそうに飲み食いする。一方で、ボルスキーさんは、平均より少食だし、酒も強くはないのに小太りだ。歓楽街の主と言っても良いカネッティさんはモテると思うが独身。一方で、オフィスに閉じこもっているボルスキーさんは妻子持ちだ。人間って本当に色々だと思う。
「それにしてもトーマス。あんたは早すぎたよ」
車は幹線道路を進み、住宅街に入る。もう少し進むとローザス邸があるメープルヒルになる辺りで、俺はため息をついた。兄貴分のトーマスがウーラント商会にいてくれれば、俺はもっと楽が出来ただろう。誠実で人当たりが良いトーマスなら、亡命系の社員もすぐに心を開いただろう。営業面でも成人していたから、夜の歓楽街への営業もできたはずだ。ウーラント商会でなくても良い、あのまま井上商会にいれば、誠実で面倒見の良いトーマスは、それなりの成功をおさめていたはずだ。周囲が気にするので飲み込んだ態をしているが、調べれば調べるほど、俺の兄貴分の戦死が意味のないことに思えてならない。
彼が散った戦場はダゴン星域の惑星カプチェランカ。年の半分はブリザードが吹き荒れる極寒の惑星だ。戦略的に価値がないかと言えばそうとも言い切れない。希少鉱石の鉱山が確かにある。ただ、そんなものは他の辺境星域でも採掘可能だ。極寒の気象条件、シャトルの発着も年に半分はままならない事を考えると、採算をとるのは正直厳しいだろう。同盟が初めて帝国に大勝利をおさめたダゴン星域を放棄はできない。そんな面子もあるのかもしれない。
もしそうなら猶更、地上戦に付き合う必要はない。艦隊を派遣して制宙権を奪う。そして補給線を断ち切ってしまう。半年もすれば、地上の帝国軍は戦闘力を失うだろう。それから降伏勧告をするなりすれば、こちらの損害はないのだ。陸戦部門の存在感を示すために地上戦が行われているとすれば、尚更無駄な事だ。
制宙権の有無が重要な以上、陸戦部門は主役足りえない。そして主役である宇宙艦隊の戦力が、帝国に比して劣っている以上、無駄にマンパワーを消費する地上戦を行うなど、そもそも愚の骨頂でしかない。士官学校を卒業すらしていない素人が言っても仕方がないかもしれないが......。
トーマスの遺族年金はシーハン嬢にも受け取る権利があったが、彼女は固辞した。でもミラー家でもそうですかと全額受け取る気にはならなかった。何とか間を取り持って、シーハン嬢には俺から多少だが養育費みたいな物を出させてもらっている。いずれはエルファシルにも進出して、シーハン嬢にも事業に関わって貰えれば、彼女の変な呵責
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