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カーク・ターナーの憂鬱
第19話 青春
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宇宙暦724年 帝国暦414年 10月末
惑星テルヌーゼン ウーラント農場
カーク・ターナー

「社長、収穫の報も問題なく。牧場の方も順調です。帝国風の加工食品の売れ行きも順調ですから、事業としては一先ず、軌道に乗ったと言えるでしょう」

「予定よりも早く黒字化できそうで良かった。ボルスキーさんにも多方面で色々と動いて頂きましたし、カネッティさんも営業に駈けずり回ってくれました。本当に感謝しています」

「事業の立ち上げ経験は、それだけで経歴に箔が尽きます。動き出して1年で黒字化ともなれば、いざと言うときに出資して頂きやすくなります。お礼を言いたいのはこちらの方で」

人事部門担当のボルスキーさんが嬉しそうに声をかけてくる。人事部門担当と言っても、実質事務系のすべてを担当している形だ。採用に関しても、亡命系から人材を受け入れる必要もあって、慣れないことが多かったと思う。でもそれすら楽しむかのようにサクサクと業務をこなし、体制を整えてくれた。同盟語での会話が厳しいウーラント卿に、財務系の業務をレクチャーしてくれているのも彼だ。
俺はウォーリック商会との折衝や、ベルティーニ家への事業説明、帝国風の食材職人の紹介をお願いする傍ら、営業責任者のカネッティさんと、毎日14時には、帝国風の食材に興味を持ちそうな『ここぞ』という店舗に、遅めのランチ兼商談で回った。カネッティさんはテルヌーゼン市内の飲食店をほとんど把握しており、名物料理が重ならないように手配してくれた。
ランチがうまい店は、ディナーももちろんうまい。週末にウーラント家としての来店を予約すると、向こうも少量とは言え、帝国風の食材を使った料理を出してくれる。そうなれば、良さも分かってもらえるというものだ。売れ行きは順調に伸びたし、テルヌーゼンに友人の少ないウーラント家にとっては数少ない外出。毎回違う店舗で味も良いという事で、クリスティンとユルゲンの中で俺の株はまた上がっているようだ。

「今日の燻製も出来が良いそうです。見繕ってくれたそうなので、ローザス様にお持ちください」

そう言いながら俺のデスクにバスケットを置き、自分のデスクに戻っていく。もうそんな時間か。俺はバスケットを手にとり、駐車場の社用車に乗り込み、ローザス邸に向かう。駐車場には少なくない車が止まっている。併設したレストランは今日も繁盛している様だ。
当初は帝国風の食材を試食してもらう場として考えていたが、付き合いが出来た料理店の若手から帝国風のレストランをやってみたいという声があがり、亡命系の伝統料理とバーラト系の料理をうまくアレンジしたメニューを出している。俺も試食しているが、かなり旨い。今ではテルヌーゼンの自称食通たちに言わせると、注目の店舗のひとつだそうだ。

レストランの灯りを横目に、車はローザス邸
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