第18話 中の上の志
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宇宙暦724年 帝国暦414年 2月末
惑星テルヌーゼン メープルヒル校
アルフレッド・ローザス
「アルフレッド君、また揉め事みたいよ?今度はウォーリック君達とだって」
「またか、分かった。ありがとうカトリナ」
幼馴染のカトリナが、心配げな視線をこちらに向けている。視線に気づきながらもタブレットで、彼に一報を入れる。視線を戻してもカトリナは心配げだ。カトリナが心配するのも無理はない。僕は本当なら学内の騒ぎを仲裁するような存在じゃないからだ。
生まれたローザス家は元々のルーツは帝国貴族だ。ただ、亡命する以上は心から同化すべきと判断し、首都星ハイネセンに近いテルヌーゼンに居を構えた。それから数世代は経っているけど、正直、亡命系というルーツはぬぐえずにいると、僕は感じていた。それは本当に細かいことで、僕の考えすぎなのかもしれなかったし、幼い頃からバーラト原理派に接する機会が多かった事も影響しているのかもしれない。
「俺の家は長征一万年をハイネセンと供に成し遂げた」
「盲目になったグエン・キム・ホアを支えたのが家の祖先だ」
そんな事を周囲に聞こえる様に言い募る光景をよく見て来た。僕から見たら、敵国である帝国の門閥貴族たちが言いそうなセリフでしかなかった。
『俺の家は銀河帝国の建国をルドルフ大帝ともに成し遂げた』
『大帝亡き後、ジギスムント1世陛下を支えたのが家の祖先だ』
ほらね。固有名詞を変えただけで、ドラマに出てくる敵役の門閥貴族のセリフに早変わりだ。そんな冷めた目線で見ていればなんとなく相手にも伝わるんだろう。クラスの多数派を占めるそういう連中とは馴染めなかった。もともと成績も平均より少し上と言ったレベル。運動もそこまで得意じゃない。クラスの少数派で、そこまで目立たない存在。友人も、幼馴染のカトリナを除けば多くはない。良く言えば平和に、悪く言えば平凡な学生生活を過ごすことになると思っていた。
そして、この変な感覚から逃れる為にも、士官学校に進路を希望していた。いずれは任官してちゃんと勤めを果たしたと胸を張れるようになれば、少しは生きやすくなるだろう。と考えての事だ。
士官学校は同盟でも難関校の一つだ。日々コツコツと目立たないながらも努力を続ける。子供らしく英雄にも憧れていたから、ダゴン星域会戦の英雄、リン・パオ、ユースフ・トパロウル両提督の書籍も何度も読んでいた。このまま行けば、首席になることはないだろうが、平均より少し上の席次で士官学校に入学する。そんな未来に向けて歩んでいた僕の静かな人生は、去年の年末から大きく変化した。
「誉めてやろう。口だけの連中が多かったからな」
「さすがウォリスだ。ただお前の爺様に世話になってはいても、手は抜かんぞ!」
黒髪長身の青年が、腕組みをしながら
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