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カーク・ターナーの憂鬱
第16話 値踏み
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宇宙暦723年 帝国暦414年 9月末
惑星テルヌーゼン ウォーリック邸
カーク・ターナー

「大旦那様はまもなくお見えになります。しばらくお待ちください」

そう言って、先導役のオルグレンは応接間の扉を閉めた。俺はジュラルミンケースを開け、ベルベットにくるまれた絵画を取りだす。その為に用意されたであろうイーゼルに絵画を飾り、ベルベットで覆いをする。前世で言うとF25号って所だろうか?そこまで作業を進めた時点で、俺も緊張していたのか?応接間に意識が向く。
玄関から応接間までの通路同様シックに纏められた応接間。ソファーもイーセンブルク校にも設置されていた帝国式の高級品だ。右手に大きくとられた窓は、上半分がステンドグラスになっており、晴天もあって部屋の雰囲気を温かく、和やかなものにしていた。

『コンコン』

ノックとともにウォーリック会長であろう初老の男性が部屋に入ってくる。事前に確認した写真は彼の現役時代のものだ。もう70歳近いはずだが、背筋はピシッと伸びていてあまり老いは感じなかった。

「お待たせしたね。会長のグレッグ・ウォーリックだ」

「ウーラント家の代理人として参りました。カーク・ターナーと申します」

グレック会長は自然に笑顔で右手を差しだしてくる。俺も彼に倣うように右手を差し出し、握手を交わした。彼の手は分厚く、そして温かかった。

「まぁ、かけてくれ。最近は妻にしか入れる機会がない。すこし待ってくれるかね」

そう言いながら、置かれていたティーセットを手元に引き寄せ、素人の俺目線でも見事な手さばきで紅茶を用意していく。イーセンブルク校のフラウベッカーにも勝るとも劣らない手並みだ。ドラクールのマスターもそうだったが、回数を積み重ねた先にある職人技のような手並みは、観ていて飽きないものだ。あっという間に、2つのティーカップに紅茶が注がれ、一つが俺の手元に置かれた。カップから登る湯気から、紅茶特有の良い香りが広がる。

「頂戴します」

会長にお礼の気持ちを込めて少し頭を下げ、ソーサーを左手で持ち上げ、カップを手に取った。香りを少し楽しんだ後で、一口、紅茶を口に含む。少し濃いめだが、好みに近かった。

「砂糖は必要ないかな?妻は私の好みだと少し濃いみたいでね。いつも砂糖を少し入れるんだ」

「砂糖は大丈夫です。私はこの位の濃さの方が好みですね。もっとも紅茶に接したのは、シロンのイーセンブルク校が初めてでしたから、好みをうんぬん出来るほど、飲みなれてもいないのですが......。」

苦笑する俺を見て、会長は少し嬉しそうだった。

「ターナー君は正直で良い。安定したビジネスには安定した関係性が必要だ。物になりそうなプランを考えられる人材はそれなりにいる。ただ、自分の適性に
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