第16話 値踏み
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同席したとなれば、マイナスに働く可能性もある。既に調査部が取りまとめた商談相手の資料は確認している。経歴だけを見れば、もっと苦労した同世代は過去にいた。今では防衛戦争は優勢だが、建国から同盟はずっといつか起こるであろう帝国との戦争に備えて来た。文字通り『臥薪嘗胆』。効率重視で、いろんな事を切り捨て国家を運営してきた。
経歴を見る限り、独立商人流の表現をするなら一人前の苦労はしていると言った所か?ただ、その経歴で結んだ縁が素晴らしかった。亡命原理派の雄、オルテンブルク家の庶子に、初めて関わった亡命業務でクライアントに見込まれて婚約者になる。出身地のエコニアから飛び出してわずか一年。あまりにも良縁に恵まれすぎている。それに働いていた収容所でも、接していた捕虜たちからだいぶ可愛がられていたようだ。接した年長者を引き付ける魅力も持っている。
ビジネスに於いてキーマンとなる人物のほとんどは年長者だ。いくら能力があっても、年長者に認められなければ成果を出すのは難しい。そういう意味で年長者に好かれるという特性も、ビジネスで成功する為にプラスに働くだろう。彼が14歳という事を踏まえれば、尚更だった。
「それに誠実で、手抜かりがないようで身内には甘いんだ」
「あら、誰かさんみたいね」
「身内に甘いのは、私だけじゃないだろ?」
独立支援も社是のひとつである以上、私も積極的だったのは事実だ。一時はやりすぎな所もあったかもしれないが、それもあって軌道に乗った部下たちは恩に感じてくれ、今では大きな取引になっている所もある。一方でイネッサは、独立していった部下たちとも季節折々に連絡をとり、困ったことがあれば相談に乗り、時に独立した部下同士を仲介したりもした。
私が現役だったころの独立支援は、表の担当は私で、裏の担当がイネッサだったのだ。私の時代に独立した連中のほとんどが、私同様にイネッサに頭が上がらない事も知っていた。
もちろん、もう少しでここを訪れる商談相手が、縁を持った貴族の若様から投資案件の相談を打診されている事。シロンでも有数の農園のオーナーの3男が、その若様と行動を共にしている事。前線に向かった彼の兄貴分から、エルファシルで関係をもった女性を気にかけてほしいと打診された事。そしてその女性が最近産婦人科を受診した事も......。
まぁ、ビジネス面での孫みたいな存在だ。手厳しくするつもりはなかった。
「まもなく到着するとのことです。応接間にお通しして宜しいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼むよ」
秘書の一人が彼の到着を報告してくる。指示を出して私はティーカップを手に取り、残っていた紅茶を飲み干すと席を立った。
「良きご縁を」
イネッサの声に応えながら、私は応接間へ向かう前に身支度を整えるために自室へ向かった
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