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カーク・ターナーの憂鬱
第16話 値踏み
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宇宙暦723年 帝国暦414年 9月末
惑星テルヌーゼン ウォーリック邸
グレッグ・ウォーリック

「年甲斐もなくソワソワしちゃって。そんな貴方を見るのは久しぶりだわ」

「分かるかい?イネッサ。まぁ、君の前では僕もまだまだいたずら少年だからね」

朝食を終え、妻と二人でテラスに備え付けたテーブルセットに腰かけ、まだ朝の涼やかな風を感じながら、シロン産の最高級茶葉を夫婦で楽しむ。結婚してもう少しで半世紀だが、ずっと続けてきた習慣だ。舵取りを誤ればウォーリック商会がつぶれるような判断も何度もここでしてきた。会長職に退き、経営を息子に委ねてからはそういうことは減ったが、設立以来、人材育成に注力し、独立支援も積極的に行った。そうして巣立っていった人材とのパイプが、新たな商機となり、ウォーリック商会の拡大にもつながった。
フェザーンが成立した40年前。当時はまだ商会の一事業部を任されていた時代だが、商会から巣立った人材たちが様々な情報を集め、それを元に連携して対策をとり、結果として多くのパイプを更に持つことができた。亡命業務にいち早く参入を決めたのも、今になって考えれば当たりだった。当時は今以上にバーラト原理派の勢いが強く、潰されるリスクもあった。その判断をしたのも、この場所だ。父に上申する覚悟を決める際は、イネッサが背中を押してくれた。

「うちは設立以来、ずっと独立を支援した人材とのパイプが力になっているものね。井上が見つけて、出光が世に出した人材だもの。きっと良い縁を紡いでくれるわね。それに調査部も動かしたんでしょ?貴方?」

「それもお見通しかい?まぁ、井上はともかく、佐三は商船持ちになったばかりだからね。部下を信じて任せるのも大事だが、手抜かりが無いようにするのも上司の役割だよ」

「そうね。でも、今更あなたの直名で調査部を動かしたら、それだけで現役の子たちは意識してしまうわ。ご隠居様はご隠居様らしく、もう少し隠密行動した方が良かったわね」

嬉し気にこちらを見るイネッサに、私はいたずらが見つかって気まずい悪ガキの様な表情をしていただろう。ただ、こんな事も久しくなかった事だ。現役の時のような気持ちになっているのは、私だけじゃないだろう。こんなに嬉しそうなイネッサも久しぶりなのだから。

「それで、調査の結果も踏まえて、貴方がワクワクしているって事はそういう事よね?私も同席しようかしら?」

「それこそターナー君が注目されてしまうよ。注目どころか嫉妬されかねない。何しろ、私以上にうちの子達は君に頭が上がらないんだからね。良き縁にはなるだろうし、亡命系とのパイプも太くできる可能性があるね」

妻同伴のイベントごとでもない限り、イネッサが商談に同席する事はなかった。それを今更14歳のギリギリ青年と言える若者との商談に
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