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カーク・ターナーの憂鬱
第15話 テルヌーゼン
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宇宙暦723年 帝国暦414年 9月末
惑星テルヌーゼン 宇宙港
カーク・ターナー

「吉報をお待ちしております。ターナー様ならきっと成し遂げられますわ。ご武運を!」

シャトルのタラップを下り、テルヌーゼンの地表を踏みしめる。初めての大商いに緊張しているのか?一度目をつむるとハイネセンのホテルユーフォニアにいる婚約者、クリスティンが、戦地に夫を送り出すかの如く、俺を見送る際にかけて来た言葉が頭に流れた。出会いの際に、ある意味騎士の様に現れ、彼女目線では危機から救った俺を、無条件に信じている所がある。同じくその場にいたウーラント家の嫡男、ユルゲンにも多少の差はあれ、そんな傾向がある。

そしてウーラント家の現当主であるグスタフ様。まぁ、俺の義理の父になる人だが、彼は帝国騎士としての生き方しか知らない。誠実であり好ましい人物だが、ビジネスの場で活躍できる素養は無かった。必然的にウーラント家の未来は俺の双肩にかかっている。実際にテルヌーゼンで立ち上げる事業計画を立てたのは俺だし、その事業計画が義父の意思決定を最後に後押しした以上、その実現に向けて資産を預けられては、最善を尽くすのが義務だろう。

タラップを降りて、宇宙港ターミナルへ向かう。階段を上り、リーダーに身分証を通してチェックアウトすると、エントランスへ足を進める。テクテク歩きながら、俺はフェザーンからテルヌーゼンまでの旅路を思い返していた。この3か月は前世を含めても、多忙で事の多い日々だった。

ウーラント家の亡命業務を請け負い、フェザーンを発った日から、俺はキャプテンに付きっきりで同盟流のビジネスの進め方を仕込まれた。機関長が寂しがっていたが、首都星ハイネセンについたら俺はクリスティンと婚約し、自分がプレゼンしたビジネスプランを、ウーラント家の代理人として実現すると言われれば、時間は足りない位だ。本来なら辺境星域出身の若造が得ることができないチャンスに恵まれた事は理解していた。キャプテンが厳しくなるのも無理はなかった。

往路で取った最短ルートではなく、ランテマリオ、ガンダルヴァ、バーミリオン、ローフォーテン、リオベルデと、大回りしたのも、実務経験をさせる為だろう。資料では認識していたが、各星系で不足しているものを売り、特産品を買い入れていく経験は、金では買えない学びがたくさんあった。交渉の場にも同席したし、キャプテン自身も、俺が考えたビジネスプランが成功するために投資してくれているのだと思った。

『またのご利用をお待ちしております』

そんなアナウンスを聞きながら、エントランスを抜けて、宇宙港に併設された乗車場へ向かう。手元にはキャスター付きの美術品運搬ジュラルミンケースがひとつ。それを引きながら歩みを進める。首都星ハイネセンに向かう中、兄貴分のトーマスや、シロ
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