暁 〜小説投稿サイト〜
カーク・ターナーの憂鬱
第14話 その頃 フレデリック・ジャスパー
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
るらしいし、本当に気が合うかもな。良くも悪くも率直な表現を好む奴だったし」

奴に突っかかって来た連中の事を、『縄張りをマーキングする犬』呼ばわりしてたからな。あれには笑わせてもらった。それに短期間だったが、他の生徒たちにも強い印象を残している。まあ、女性陣は社交ダンスのパートナーとしてかもしれないが、『優秀な問題児はいなくなると寂しいですね』とフラウベッカーがこぼしているのを耳にした。

「投資先に関しても相談しても良いかもな。後進達の面倒を見るには、資産も必要だ。ジャスパー家だけが食べていくには困らないが、亡命融和派への支援を考えれば、資産はいくらあっても困らない」

「そこまで負担をかけるのもどうかと思うが......。伝手がないのも事実だし、投資がきっかけでパイプが出来るかもしれん。俺も親父に相談してみよう。もっとも、士官学校対策をちゃんとしろと怒られそうだが」

そう苦笑しながら料理を食べきってコップの水を飲み干すヴィットリオ。俺も水を飲み干し、一緒にバールを後にする。こいつは2皿喰うからどうしても少し待つ事になるが、豪快な喰いっぷりは見ていて気持ちが良い。待ち時間を不満に思ったことは不思議となかった。ワインが欲しい所だが、士官学校を出るまで断つ誓約を、俺達は立てた。些細な事だが、そんな事すら、自分で人生を進めているようで楽しかった。

バールを出てヴィットリオと別れ、家に向かう。
玄関を抜けてリビングに入ると、祖母が思いつめた表情でソファーに座っていた。

「フレデリック、ローザス家からお返事が届きました。数人なら受け入れて頂けるとのことです」

そう言いながら書簡を手渡される。早速内容を確認すると、お願いしていた士官学校対策のために、バーラト系の教育機関への転入手続が終わった旨とローザス邸への滞在を了承する旨が記載されていた。

「フレデリック、私はもう何も言いません。ジャスパー家の事は気にせず、貴方の道を進んでください。ただ、くれぐれも身体に気を付けてね」

「分かっています。戦死なんてしません。それにジャスパーの名を轟かせてみせますよ!」

右手のハンカチで目元を押さえながら語りかけてくる祖母を安心させようと、俺は右手で肩に触れながら敢えて明るく応じた。このままシロンで過ごす未来も確かにあったのかもしれないし、少なくとも祖母はそれを望んでいたのは確かだ。期待に応えられない以上、せめて不安くらいは解消したかった。

「ローザス家のアルフレッド殿は貴方と同い年だそうです。士官学校を希望されているとの事でしたから、きっと良き縁になるでしょう」

そう言うと、祖母は自室に戻っていった。涙をこらえきれず、それを孫に見せるのははしたないと思ったのだろう。ローザス家は亡命貴族を祖とする家だが、亡命した以上
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ