第14話 その頃 フレデリック・ジャスパー
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融和派としっかりしたパイプを作りたい。そういう意味でも、俺達の責任は重大だ。せっかくやるなら自分の力を試すというのは良いな。せっかくの人生だ。どうせ目指すなら同盟軍将星列伝に名が残るくらいにならねばな」
納得したのか。ヴィットリオはまた豪快に料理を食べ始めた。シロンを始めとする亡命系のメイン商材は、紅茶を軸にした嗜好品だ。フェザーンが成立したことで、帝国から本場の嗜好品を輸入することも可能だ。もっとも同じ帝国とは言え、敵対派閥の領地で作られたものは嫌厭される。逆にシロンから輸出される流れもあるのだ。ただ、亡命原理派は正直あぐらをかいていると思う。
嗜好品だからこそ、良いものなら愛されるし高値で取引される。だが、逆に言えば無くても死ぬものではない。効率重視だった同盟で遅れた分野だったからこそ珍重されているが、やろうと思えば重税を課して業界をつぶす事も出来るのだ。実際、同盟国内で最大の組織である同盟軍では、備品にしているのはコーヒーで、紅茶は項目に入っていない。もちろん予算の関係もあるのだろうが、バーラト系が本気になればいつでも潰せる砂上の楼閣の上に、今の亡命系の経済は成り立っている。ベルティーニ家を始め、経済界の現場を担う層が、疑似的な貴族制の中で上層部の意向を踏まえつつも融和を図るのも、この実情を肌で感じているからだろう。
「俺達が活躍すれば、同盟軍でも紅茶を備品にできるかもしれんしな。実際、旧世紀の地球では、もともとは紅茶を飲んでいた層が、反感から紅茶を消費しないためにコーヒーを愛飲し始めた実例があるらしい。親父も苦い顔をしていた」
「だろうな。亡命系の経済基盤は思ったより盤石じゃない。まぁ、その辺はバーラト系に移動してから、ターナーに連絡してみても良いかもな。あいつはバーラト系融和派の商船に乗っているから、伝手も多少はあるだろう。フェザーン観光もしたらしい。何かしら助言はもらえるはずだ」
「あのオレンジ頭か。フレデリックといるのを見た時は、従士かなんかだと思ったが、妙に存在感があるから変に思っていたんだ。あの年で航海士見習いとして働いているなんで大した奴だよ。俺も子供のころから農園で手伝いをさせられていたからな。じっくり話し合う機会があれば馬が合いそうだ」
嬉しそうに話すヴィットリオ。彼とターナーの関係は顔見知りって所だ。俺の身分に配慮して、ターナーは一緒にいるときは周囲に気を配っていたし、常連連中とも踏み込んだ関係になろうとはしなかった。それが亡命業務に関わるターナーなりの気遣いだったのは、あいつがシロンを発ってから気づいた。実際ヴィットリオも何度か話しかけようとしたらしいが、なんとなく気が引けていたそうだ。
「そうだな。ターナーは気難しい奴じゃない。辺境出身だが、収容所で捕虜と一緒に土木作業をしていたこともあ
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