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カーク・ターナーの憂鬱
第14話 その頃 フレデリック・ジャスパー
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宇宙暦723年 帝国暦414年 9月末
惑星シロン 平民街
フレデリック・ジャスパー

「うむ。お家の事が何とかなるなら、むしろ行動を早めるべきだろうな」

「ああ。何とかじい様は説得できた。とは言え婆様が無言で悲しそうな表情をするから敗戦しかけたが」

「貴族も平民もそういう所は変らんか。俺も母さんの涙はどうしようもなかったが、何とか受け入れてもらったよ」

ターナーの財布が許す範囲でという事で出入りを始めた平民街のバールで、飯を食いながら俺は友人とお互いの戦況を報告しあっていた。俺の対面で豪快にソーセージに食らいついている男は、ヴィットリオ。がっしりとした骨太の体格で、一見クマのような印象を受けるが、話してみると優しい男だ。彼の実家であるベルティーニ家は大規模な農園を運営しており、シロン名産の紅茶を始め、様々な作物を生産している。年の割にがっしりとした体形は、もしかしたら農園を幼い頃から手伝った成果なのかもしれなかった。

「ベルティーニ家でも俺は3男だ。抱え込んでも農園の経営者が増えるだけだし、今は原理派が強い。とは言え、うちは紅茶が売れなきゃ話にならない。一人くらいバーラト系と誼を通じる意味で、士官学校に行かせる判断はするだろうし、俺自身もこのまま農園主になるのは詰まらん。ある意味渡りに船だったが、ジャスパー家はフレデリックに何かあれば断絶だろう?本当に良いのか?」

ソーセージを噛み下したと思ったら、急に顔を寄せてきて小声で話しかけてきた。豪快なのか繊細なのか?若しくは周囲の平民に聞かせる話でもないと思ったのか?ターナーとは違った意味で、俺の周囲には今までいなかったタイプだし、俺はこいつを好ましく思っている。

「まぁ、死ぬと決まったわけじゃない。それにな、ジャスパー家はもともとオルテンブルク家の従士の家柄に過ぎん。変に俺がシロンに留まり、血脈を広げてしまうとそれはそれで邪魔なのさ。そういう意味で士官学校に行かせる判断は、俺を守る意味でも正しい」

「それはそうだが、オルテンブルク家は亡命原理派の雄だろう?士官学校を経て任官しても、戦死の可能性が高い前線に配属されるのか?昇進も多少は優遇されるだろう?」

ヴィットリオは相変わらず小声だ。どこかで既視感があるなと思ったら、最近フェザーン系の配信会社が始めたクマのアニメーションだ。蜂蜜を夢中で食べるシーンによく似ている。丁度ここに来る前に通りかかった広場のモニターで映っていたシーンだ。

「そういう考え方もあるが、どうせやるなら俺は自分の力を試したい。俺たちが功績を上げて成功するほど、亡命融和派も増えるだろうし、俺達に続く連中も増えるだろう。バーラト系融和派も、さすがに血筋だけじゃ重視してくれない。そういう意味でも功績は必要だ」

「そうだな。バーラト系
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