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曇天に哭く修羅
第四部
それぞれの想い 2
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、エネルギーの塊かつ、世界の一部。

死のうが世界と同化して循環し、再び精霊としてこの世に生まれ(いず)るのだ。

精霊の転生体は基本的に前世の記憶は無いが、個体によっては残っているし、前世の力を引き継いでいる場合も有るので精霊にとっては決して死ぬことが悪いことであるわけではない。

なので精霊は人間に比べて自分の生命に対しての執着が希薄な傾向に有る。


「そもそも精霊って妖精と違って人間から物理的に干渉できる存在じゃないから違う【位相】に居れば会えないんだよね」


桜花が()べた通り、本来の精霊は【精霊界】で過ごし、人間界に関わる時も同じ世界のズレた位相で全く干渉されないようにする。

人間と同じ世界、同じ位相で居ても、あらゆるものをすり抜けてしまうほど存在を薄くして妖精のように実体化しない。

そんな精霊が人間界の一部を切り取って擬似的な精霊界を作った挙げ句、一部の人間に対してだけ協力する理由は上位存在だ。

精霊は地球が生まれるよりもずっと昔、約80億年前から上位存在と争っている。

特に【旧支配者/オールドワン】との関係は険悪で、【古代旧神/エルダーワン】とは限定条件での不干渉を貫く。

【魔獣領域】と【魔獣】に関しては一定以上の力を持つ精霊の餌場と餌として利用。


「俺には想像も出来んが、旧支配者が精霊と戦っていなければ地球は無くなりはしなかったものの、生態系が変わっていたらしいな」


恐らく魔獣だらけだったはず。

春斗はエンドに回復してもらいながら目を瞑って物想いに(ふけ)っている。

旧支配者が地球に差し向けた軍勢は全体から見て、ほんの一部に過ぎない数。

思いのほか地球人が頑張ったので、旧支配者でも最強クラスに位置する《ナイアー=ラトテップ》のような最精鋭が送り込まれてきただけ。

最初から必要な分だけ軍勢を使えば一時間もかからず勝利できていた。


「まあ今は【冬季龍帝祭】に集中しなくちゃいけないからな。桜花さん、俺はお兄ちゃんの方に行ってきます。何か有るかもしれないんで」


エンドは二頭のドラゴンを呼ぶ。

もちろん精霊だ。

仲間にした精霊である。

名を《インドラ》と《ヴリトラ》

下級の上位存在をも喰らう。


「じゃあお願いします桜花さん」

「任せて。江神君を立華君に負けない位の強さに仕上げてあげるよ」


エンドはヴリトラに乗ると、インドラを引き連れ紫闇の下へ飛んでいった。


「さて江神君。この修業で最後の対戦相手は僕が務めさせてもらう。今まで倒した精霊よりも強いから覚悟してもらうよ?」

「願ってもない。貴方に勝てれば成長した立華紫闇にも勝てるでしょう」


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