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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
魔法絶唱しないフォギア無印編
今はまだ恋人で
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その後、奏の誕生日パーティーは何事もなく終了。会場には片付けを担う者だけが残り、颯人と奏を始めとした戦闘要員はいの一番に解散となった。
奏は颯人のマシンウィンガーで送られ、自宅のマンションの前に降ろされる。
「んじゃ、また明日な」
「あぁ…………なぁ、颯人?」
「ん?」
何事も無く去ろうとする颯人を、奏が呼び止める。彼が足を止めて奏の方を見ると、彼女は何処か期待したような目を彼に向けていた。
「えっと、その…………うん。颯人」
「何だ?」
暫し何か悩んでいた奏だが、考えが纏まったのか再び颯人の名を呼んだ。
「店で買った奴じゃ、受け付けないからな」
脈絡もない事を口にする奏だったが、颯人はその言葉の意味が分かったのか小さく噴き出すと踵を返して奏に近付き、徐に口付けをした。触れ合うだけのプレッシャーキスを、奏は嫌な顔もせず受け入れる。既に彼からの告白を正式に受け入れた奏にとって、この程度の事は挨拶も同然だった。
それでもいきなりやられるとやはり顔が赤くなるのは止められなかったが。
「予約、確かに承ったぜ。こいつは前金な」
どこか誇らしげな顔でそう告げると、今度こそ踵を返して愛車に跨り去っていく颯人。
奏はそんな彼の背を、唇に指を這わせながら暫し見つめ、彼の背が見えなくなると微笑みを称えながら自宅へと向かうのだった。
一方、奏の元を去った颯人は適当な所で愛車を止めると懐から小さな箱を取り出しそれを開けた。
中には一つの指輪が入っている。ウィザードリングではない。なかなかに凝った装飾が施され、それでいて派手さは抑えられた指輪だ。
彼はそれを取り出し、指先で掴んで出来栄えを確かめる様に月明かりに翳した。
月の優しい光に照らされた指輪を、颯人は愛おしそうに眺める。
「――――もう作ってるって言ったら、奏の奴どんな顔するかなぁ?」
その場合の奏の反応を予想し、楽しそうに笑うと颯人は指輪を大切に箱に入れ懐にしまい込んだ。
「ま、もう暫くは恋人気分を満喫しようぜ。プロポーズはもう少しの間お預けって事で」
この場に居ない奏に向けての言葉は、誰の耳に入る事も無く夜の帳が下りた街の中に消えるのだった。
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