第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第46話 天上の鎧:後編
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持った彼はそれを天子に向けて構えた。
「……あなたのナイトは剣の持ち方を間違ってはいないようね」
「とうぜーん♪ マッくんは今、最強の騎士なんだよー」
と、勇美と軽口を交わし合う天子であったが、彼女には内心余裕がなかった。
それは、相手の力を見極めるのは緋想の剣であれど、天子自身剣の能力を行使する内に彼女にもそれなりに眼力というものが備わっていったから、彼女にも目の前の存在がいかほどのものか感じられるのだ。
「……来なさい」
だが、天子とて剣士の端くれ。ここは潔く相手の鋼の騎士を招き入れる覚悟を見せた。
「ふんっ!」
天子は意気込みながら手を振り翳す。すると彼女の手に石くれが集まっていき、剣の形に変貌したのだ。
──緋想の剣を奪われた天子の、即席の剣であった。
だが、天子の能力で生み出した物だ。決して弱いという事はないだろう。
「それじゃあ、クレスソルジャー、お願い!」
勇美は相棒の騎士に命令を下すと、彼は唸り声のような駆動音を鳴らした。
彼が人語を話せたら、きっと『御意』とでも言っているのだろう。
そして、とうとう鋼の騎士は両手に持った剣を振り被った。そこへ勇美の緋想の剣の能力発動のスペル宣言を行う。
「【戦符「オラわくわくすっぞ」】!」
「何よそのスペル名」
天子は納得がいかなかった。貴重な緋想の剣発動の文句をそんな大食いの戦闘民族みたいな名前で刻まれるのは誠に遺憾であった。
だが名前はふざけていても、攻撃の重さは本物であったようだ。
彼の攻撃に合わせた天子の太刀筋とぶつかり合うと激しい衝撃が走ったのだ。
剣と剣の力は暫く均衡し合っていた。だが、やはり結果は見えていた。
天界に伝わる由緒正しき緋想の剣に、天子が今作り出した有り合わせの剣。当然の如く後者の方が不利なのであった。
緋想の剣に抗っていた石くれの剣。勇ましくもあったそれは、非情な運命を受け入れるが如くヒビが入り……そして砕けてしまったのだ。
「くっ、当然って事ね!」
だが、ただではやられない天子であった。
彼女は自身の能力を使い、足元を揺るがすとその反動で跳び上がり後ろに距離を取ったのだった。
「粘りますね……」
勇美は感心と焦燥が入り混じった心持ちで呟いた。
「忍耐強さが私の取り柄だからね」
天子は空元気ではあるが威張って見せた。
そして、彼女の醸し出す雰囲気が変わったのだ。
「幾ら緋想の剣を奪われた私だからって甘く見ない事ね!」
言うと天子は両手を前に翳す。
「『地を操る能力』は緋想の剣の力ではなくて、私自身の力だって事を思い知らせてあげるわ」
「!?」
勇美は目を見開いて天子の様子に見入ってしまった。彼女から今までにない気迫が感じられたからだ。
「何をする気なのですか?」
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