第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第45話 天上の鎧:前編
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成っと♪」
まるで苦心して組み立てたプラモデルのように、勇美はその謎の物体を愛おしげに掲げる。
「……何よ、それ」
天子は何か得体の知れないものを感じて警戒する。
「まあ、見てのお楽しみですよ」
そして、勇美はその物体をがしりと掴み、小石のように投げ付けた。
「そんな攻撃で……」
天子はそれをじっくり見据えながら思った。投げ方が素人同然だと。そんなようでは『攻撃』にすらなっていないのではと。
だから彼女は軽くみていたのだ。『こんなものは軽く斬り捨ててしまえばいい』と。
そう思い、天子は最低限の動きで、その物体に剣を向けたのだ。
緋想の剣が黒い三面体を捉えて、その刃をめり込ませる。
その瞬間、勇美は目に光を灯し口角を上げながら言った。
「【冥符「ダークマターボム」】……」
まるでその言葉を合図にしたかのように、三面体にピキピキと音を立ててヒビが入っていった。
そして、毒ガスの如く黒い気体が吹き出し、続いて三面体は内部から押し上げる力により不気味に膨れ上がった。
「!?」
刹那、凄まじい爆発が巻き起こり、天子を包み込んだのだ。
しかも、その爆発は鮮やかな赤と橙色の中間ではなく、禍々しい紫と黒を混ぜたようなものだった事もその異様さに拍車を掛けていた。
余す事なく闇の爆ぜは天子を飲み込んでしまった。これでは彼女とてひとたまりもないだろう。
「うまくいったみたいだね♪」
ドッキリ作戦が成功したように胸をすかせながら勇美は呟いた。
だが、そんな最中声がした。
「うん、意外性も威力も申し分なかったわ……」
「えっ?」
未だ続く爆発の中から聞こえてきた声に、勇美は意識を集中した。
そして、爆発が収まると、その中にいた者の様子が露になっていった。
「あ……」
その光景を見た勇美は唖然としてしまった。
そこには多数の要石を身に纏った天子の姿があったのだ。
「……それであの爆発から身を守っていたのですか?」
「ええ、私でも生身であれには耐えられないからね」
生身ではないとはいえ、先程のような多少の障壁で耐えられるのか。勇美はそういった思念に見舞われる。
「それで、結論は『程遠いんだよねぇ』ですか?」
「いや、私はあんなサディストとは違うわ!」
「ですよね。やっぱ天子さんはMの方ですよね」
「それも違う」
ああ、何時からか、天子はそう思った。かつて幻想郷で異変を起こした理由を『退治されたいから』と挙げた事が一人歩きしてしまったのは。
「……」
対して、天子と仕様もないやり取りをしていた勇美は追い込まれていた。
──先程の攻撃は勇美の渾身の一撃であり、あれで勝負を決める算段だったのだ。
耐久力の強い天子に対して、チマチマと攻撃をしても焼け石に水だと思ったから
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