第七十三話
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よりかは危険は少ない」
確かにそう言われるとその通りだ。お市を連れて戦場を駆け回るわけにもいかないし、奥州でお市を守れるだけの人員を確保するのは難しい。
小田原の敗戦、あの痛手がまだ残っていて、十分な人員を揃えられないまま出陣してしまったという経緯が実はある。
まぁ、これも蓋を開けてみると政宗様が石田にやられたことに怒り狂って奔走したってのがあるみたいで、
小十郎もあえて何も言わずに諌める機会を待って動いたところがあるらしい。
政宗様が頭に血が昇ってるのが分かってたからそういう作戦に切り替えたみたいだけど……
ひょっとして、あの刀を素手で受け止めたのもやったのかしら。甲斐で。
預かってくれるのならこっちも願ったりだけど……お市がそれを納得してくれるかどうか。
とりあえず本人と話をしてみないとどうにもならないか。
「お市、起きて」
軽く身体を揺すると、お市がゆっくりと身体を起こした。お市はじっと家康さんを見て、柔らかく笑う。
「お市、これから私達は戦に行かなきゃならないの。
でもね、そんな危ないところにお市を一緒に連れて行くわけにはいかないから、
家康さんのところでお留守番をしてもらいたいのよ。どうかしら」
「光色さんと一緒にいるの……?」
光色さんって、また微妙な言い回しを。
「うん。光色さんは強い人だから、お市のことを守ってあげられるし、
私もお市が光色さんのところで待っていてくれると安心して戦えるから」
努めて笑ってそう言うけれど、お市は悲しそうな顔をして頭を押さえている。
「いや……貴女も市を捨てていくのね……そうやって、独りにして……死んでいくのね……」
いやいや、勝手に殺さないでよ。まぁ……結構な境遇に置かれていたからそう言いたくなるのも分かるけど、
そこは出来れば信じて待っていてもらいたいもんだ。
「生きてて欲しいって思ってくれるのなら、光色さんと待ってて?
お市が危険な目に遭うと、それだけで気になって戦えなくなるから。戦えなくなったら、それこそ私は死ぬわ。
……お市が安全なところで待っていてくれると思えば、ちゃんと安心して生きて帰って来られるから。
大丈夫、竜の右目は伊達じゃない、ってね?」
そう笑いかけてみると、小十郎は少しばかり目を細めて私を見る。
こんな状況で勝手に竜の右目を使うな、って言いたそうだけど知ったことか。
「……本当? ちゃんと生きて戻ってくる?」
不安げに揺れる睫が愛らしい。髪を撫でて優しく微笑むと、その不安が少しばかり晴れたような気もした。
「約束! 生きてここに戻ってくるから、お市も光色さんと待ってるって約束してくれる?」
「うん……市、ここ
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