第七十話
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女だ、ってことになってるんですから」
渋い顔をした政宗様は、ぐっと杯の酒を一息に飲み干した。
そんなペースで大丈夫か? 大丈夫だ、問題……いやいや、大有りだろう。
私も湯飲みに酒を注いでもらって、それを飲む。
お市はどうなのかと思ったけど、飲むというので飲ませてみたら意外と強そうな気がする。
政宗様が持って来た奴、そんなに強くは無いけれど結構辛口なんだよね。
でもそれを辛くて美味しいとか言ってるから……この子、ザルかワクかどっちかなんじゃないのかなぁ……。
うーん、人は見かけによらないわ。
「……強くなったのは、お前の為か」
「へ?」
唐突に言い出したそれが一体何のことだか分からなくて、私は首を捻ってしまった。
「小十郎だ。そう言ってただろ」
ああ、そう言えば私に頼って欲しいから強くなった、って言ってたよーな。
何となく面白く無さそうな政宗様に、悪いと思いつつ噴き出してしまった。
「……笑うんじゃねぇよ」
だってさぁ、政宗様ったら本気で拗ねてんだもん。
強くなった理由は俺の為、って言ってもらいたかったんだってのは予想がつくけどもさぁ〜……
笑うしかないっしょ。そんな顔して言われたら。
「政宗様が思ってる“強さ”と、小十郎が言った“強さ”は違うと思いますよ」
そう答えてやると、政宗様が少しばかり興味深そうにこちらを見ている。
「小十郎が命を懸けて守ると決めたのは政宗様です。守る為の強さを、政宗様と出会ってから必死に磨いてきました。
あの天才的な剣の腕も内務の能力も、博識であるのも全て政宗様の為です。
いや〜、愛されてますねぇ〜。閨にでも呼んでやったらどうっすか」
「小十郎じゃその気にならねぇよ。俺にも好みってもんがある。親父みてぇに抱ければ何でもいいってわけじゃねぇ」
ほ〜、好みですか。見事に私がそれに当てはまっていたと。貴方も随分悪趣味ですね。
っていうか、輝宗様の趣味もきちんと心得てましたか。それはそれは。
まぁ、それは置いといて……。
「守られなくても一人で立てる強さ、転んでも手を差し伸べられずに立ち上がれる強さ……
小十郎の言った強さってのはそういうもんだと思うんです。
子供の頃は、今の小十郎とは違って本当に頼りなかったですから。
誰かの拳に傷つけられて、誰かの言葉に心を傷つけられて……いつも泣いてばかりいましたからね。
そういう人間に頼ろうって気にはならないでしょ」
「……まぁ、な」
「それに男だから、女に頼られたいってのはあるでしょ」
小十郎だって何だかんだで男だしね。
それに惚れてたって思ってたんだから、良いところ見せたいってのはあるだろうしさ。
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