第六十九話
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かく笑う。
「全部、流しちゃいなよ。二十年間流せずに溜めた分の涙。……今回の分も含めてさ。
私の前でくらい、弱くあったっていいじゃない。一から十まで全部強くなくていいよ。
夕ちゃんの前でもいいけどさ、私の前でも竜の右目である必要は無いから」
そんな私に酷く悔しそうな顔をして小十郎が口を開く。
「俺が泣いたら、姉上は何処で泣くのですか。……俺は、貴女に頼られたくて必死に強くなったのに」
その告白に、私は苦笑してしまった。
まさか“強くなった”理由がそんなんだったって、笑うしかないじゃないのよ。
全く、お姉ちゃん大好きもここまで来ると病気だよ? でもそれが嬉しい私も困っちゃうけど。
でも、泣かないことがイコール強さってわけじゃない。それを小十郎はきちんと分かってるのかしら。
「馬鹿、それとこれとは話が別でしょうが。泣く時はしっかり泣く!
……小十郎は人よりそういうところが不器用なんだから、泣ける時はしっかり泣いとかないと。
私は大丈夫よ。……小十郎が思ってる以上に、私は小十郎のこと頼ってるから」
しっかりと自分の肩に小十郎の顔を押し付けて、頭を撫でてやる。
静かに小十郎が私の背中に手を回して泣き始めたのを感じ、小十郎には気付かれないように息を吐いた。
殺した事は、正直罪だと思う。だけど、私はこの子にそれを突きつけて責めることは出来ない。
私が小十郎に言ったことは間違ってると思うけれど……でも、これほど苦しんできたんだから良いんじゃないかと思う。
小十郎にだって恨みを晴らす権利はあると思う。……都合の良い解釈だと分かってはいるけど。
普段、小十郎が政宗様にも見せようとしない内面の弱さを目の当たりにして、政宗様が少しばかり渋い顔をして口を閉ざしている。
何も言わずにただ小十郎が泣き止むまで政宗様は立っているだけだった。
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