第六十九話
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いて六助の頭を思いきり踏みつける。
「……俺のことなら好きに言やぁいい。が、姉上のことを悪く言われんのは黙っちゃいられねぇ……。
……悪いが、今はテメェに討たれてやるつもりはねぇんだ」
「このっ……」
小十郎の殺気に六助が完全に竦んでいる。これはもう大丈夫か? と思って重力を解いてやれば、小十郎もまた足を退けていた。
「……今、仇を討とうと襲ってくるってんなら、ガキの頃の礼も含めて相手してやる。
……いずれ、役目も終わり俺が必要とされなくなる日が来る。仇を討つつもりなら、その時に来い。
……その時は、俺も覚悟を決めよう。だが」
軽く小十郎が雷を身体に纏わせて刀に手をかけたところで、六助は化け物と小十郎を罵って逃げていった。
完全に六助が見えなくなったところまで凄んで見せ、いなくなったのをきっちり見届けてから
殺気も構えも解いてただ悲しそうな顔をして見せた。
泣きたいのに泣けないなんて表情は、最近じゃほとんど見る機会が無くなった。
いや、一年か二年前にもこんな顔をして泣いたことがあったっけか。でも、あれ以来見てないような気がする。
「……何で黙ってたのよ。そんなこと」
「人を殺したなどと……知られるのが怖かったからです。……知られれば、もう側にはいてもらえないのではと」
それで一人で耐えて、悲しんで……そういえば、二十年前くらいから私に縋って泣かなくなったような気がする。
いや、泣くこと自体ずっと少なくなった。
成長したんだって思ってたけど、実はそうじゃなくて私に縋れないほどに傷ついて悲しんでたんだって、二十年も経ってやっと気付いた。
……もしかして、人の生死に絡むことは泣かないと決めた、っていうのは……これが原因?
「……力の暴走だったのです。あの日も、人気の無い場所に連れ込まれて手酷く殴られました。
その時に力が暴走して……抑えきれずに雷を放っていました。……ですが、小十郎は心の底で思っていたのです。
死ねば良いのに、と」
ずっとずっと溜めてきた真実、小十郎が一人でずっと心に抱えて苦しんできたことだ。
私は今にも泣きそうな顔をする小十郎をしっかりと抱きしめた。
随分と身長差は出来たけれど、あの幼い小十郎を抱いているような気がして、なんだかそれが可笑しい。
「思うわよ、私だって思う。あんな状況で、笑ってられる方がおかしいわよ。
……小十郎、たまたまだよ。小十郎だけが悪いわけじゃない……やってしまったことはもう仕方が無いけれど、
それを全て自分のせいだと思わないで。それを罪だと思って仇討ちされることを許さないで。
……アンタがアイツに殺されたら、きっと私はアイツを嬲り殺しにするわ」
ぱた、と目から落ちた涙を見て、私は柔ら
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