第六十八話
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だりしないかが不安だったんですけど、まぁ……立派に歪んじゃって……」
まさかヤクザになるとは思わなかったもん。酷い、酷過ぎる。お姉ちゃんは悲しい!
いやいや、今はそれは置いとくとして。
「……で、六助って奴が小十郎を苛めてたと。……でも、少し様子が違ぇように思ったがなぁ」
確かにそうは思った。ただ苛めているだけで、あんなに憎らしいって目で見るだろうか。
今なら反撃出来るくらいに強くなった小十郎が、そういう目をされても仕方が無いって取れるような顔してたしさ。
何か私の知らないところであったと考えても良さそうな気がする。
「……鬼さんが泣いてるわ」
ぽつりと呟いたお市の言葉に、私達は揃って眉を顰める。
「何でも見通す目を持った優しい鬼さんは、罪の意識に苛まれてたった独りで泣いてるの……。
今も痛い、苦しいって、独りで悲鳴を上げてるわ」
お市の言葉に私は政宗様の部屋を出て、真っ直ぐ小十郎の部屋に向かう。
すぱん、といい音をさせて戸を開けて部屋に飛び込んでいくと、小十郎が丁度着替えをしていたところで、真っ赤な顔をされて追い出されてしまった。
「開ける時は一声掛けてからお願いします!!」
「ご、ごめん」
いやだって、お市が意味深なこと言うから……部屋で一人で泣いてたらどうしようかって思ってさぁ……。
私の後を追ってきた政宗様が、この様子を呆れたようにして見ていたのはもうどうでもいいとして……。
「お前な、いくら弟でもプライバシーってもんがあるんだから」
「互いに裸を見合った中です。もうプライバシーもへったくれも」
「そういう誤解を招くようなことを仰らないで下さい!! 共に風呂に入っただけでしょうが!!」
部屋の中から小十郎が怒鳴ってきたけど事実だから仕方が無いじゃないの。
ちなみに政宗様がかなり不機嫌そうな顔をしていたけど、知ったことじゃありません。
「俺も風呂に」
「小十郎とどうぞ。私よりもメリハリのある身体してますから、揉みたくなったら存分に」
そんなことを言って、着替えを済ませた小十郎に遠慮のない拳骨を貰ったのは言うまでもない。
全く……お姉ちゃんはこれでも心配してるのよ? 部屋で一人で泣いてたらどうしようかって。
歳を重ねるごとに不器用さに磨きが掛かっていくからさ。
お市の言葉に引っ掛かるものを感じながら、私は小十郎の説教を話半分に聞いていた。
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