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左耳がなくなっても
第三章

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 実際に猫達が退院すると六匹共引き取った、そうして家で飼いはじめると。
「皆元気みたいだな」
「はい」
 浜野は家に猫達を見に来た掛布に笑顔で話した、見れば猫達は皆彼の傍にいる。
「俺にも懐いてくれて」
「皆首輪付けたんだな」
「雄は黒、雌は白にしました」
 その首輪の色はというのだ。
「名前もそれぞれ付けました」
「ああ、首輪に名札あるな」
「全員同じ毛の模様ですから」
 それでというのだ。
「わからないですから」
「だからか」
「はい、それで」
「名札を付けてか」
「誰が誰かわかる様にしています、こいつがミナで」
 白い首輪の子猫の一匹を指差した、実際にそこには片仮名でそう書いてある。
「こいつがマナ、こいつがケンタでこいつがケンジ、こいつがケンゾウです」
「ニャン」
「ニャンニャン」
「ナ〜〜オ」
「ミャウン」
「ニャ〜〜ン」
 五匹共ここで鳴いた、皆浜野の傍にいる。
 そして浜野は自分の膝の上にいる母猫の背中を撫でつつ話した。
「こいつはスカーにしました」
「耳がそうなったからか」
「はい、ですが実はこいつが一番です」 
 掛布に背中を撫で続けつつ話した。
「俺に懐いてくれてます」
「そうなんだな」
「もう家にいるといつもついて来て」
 それでというのだ。
「大変ですよ」
「皆お前が助けて引き取ってな」
「飼ってることがわかっているからですか」
「それで懐いているんだよ」
「それは何よりですね、やたら噛まれて引っ掻かれますが」
「それは猫だからな」
 それでというのだ。
「もうな」
「そのことはですね」
「当然としてな」
 猫を飼っているのならというのだ。
「やっていけばいいさ」
「ですよね」
「じゃあこれからもな」
「この子達をですね」
「大事にしていけよ」
「そうしていきます」
 浜野は笑顔で応えた、そうしてだった。
 掛布に猫達の日常の詳しいことを笑顔で話した、掛布はその話を聞いて彼も笑顔になった。


左耳がなくなった猫   完


                  2020・7・27
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