第一章
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左耳がなくなっても
消防署員の浜野忠雄はこの時出動していた、そうして先輩の掛布吉宗に消防車の中で運転しつつ言った。
「正直火事は起きないで欲しいですが」
「それでも今回は廃家だからな」
掛布は浜野にこう返した、鋭い目で黒髪を短く刈った大柄な浜野よりは数センチ低く剽軽な顔立ちで黒い髪の毛は少し少ない。
「まだな」
「ましですね」
「人がいないだけな」
「人がいたら」
浜野は運転しつつ顔を顰めさせて言った。
「それこそ」
「ああ、大変だぞ」
「ですよね」
「いつもそう言ってるけれどな」
「命がかかっていますから」
「本当に大変だ、けれどな」
それでもというのだ。
「今回はな」
「人がいないだけましですね」
「ああ、じゃあ現場に着いたらすぐにな」
「消火活動ですね」
「それにあたるからな」
「わかりました」
浜野は掛布の言葉に頷いた、そうしてだった。
二人は共にだった、他の消防署員達と共に現場に着きすぐに消火活動にあたった。それが一段落ついた時にだった。
ふとだ、浜野は火災現場だった廃家の端に三匹の子猫達を見た。三匹共茶色で顔の下と胸それに足と尻尾の先が白い。
その猫達を見てだった、浜野は言った。
「皆火傷して弱ってますよ」
「こっちにも二匹いるぞ」
掛布も二匹の子猫を見付けた。
「皆火傷してるな」
「それで弱ってますね」
「すぐに助けよう」
掛布は浜野に言った。
「人間も猫も命は同じだ」
「そうですよね」
「幸いまだ息がある」
「ナァ〜〜・・・・・・」
五匹共弱っている、しかしだった。
それでも少し動いていて目も開いていた、掛布は五匹共まだ間に合うと見てすぐに救助にかかった。だが。
浜野はもう一匹見付けた、そのもう一匹は子猫達より大きい普通の大きさの猫だった。やはり毛は茶色で顔の口の部分と胸、足と尻尾の先が白い。
その倒れている猫を見て浜野は言った。
「この子は」
「どうした?」
「多分子猫達の母親だと思うんですが」
掛布に眉を顰めさせて話した。
「かなり酷いですよ」
「おい、これは酷いな」
掛布もその猫のところに来て見て言った。
「それもかなりな」
「ですよね」
「目と鼻と口が火傷していて」
「足もですし」
「左耳は焼けてなくなってるぞ」
「子猫達を助けてですね」
「こうなったんだな」
酷い火傷を負ったというのだ。
「これは」
「そうですよね」
「ああ、けれどな」
「この子も病院に連れて行きますね」
「そうしような」
「じゃあ」
「すぐに六匹共獣医さんのところに連れて行くぞ」
こう言ってだった。
掛布は浜野と共に五匹の子猫に母猫を獣医に連れて行った、そうして獣医
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