第13話 その頃 トーマス・ミラー
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コに火をつけるために、クラーク上等兵がくれたジッポを取り出し、彼女のタバコに火をつけた。
「紳士なのね。ありがとう。ヤン・シーハンよ」
「トーマス・ミラーです」
自然に名乗られたが、僕の自己紹介がどこかおかしかったのか?彼女は僕の自己紹介を聞くと笑い声をあげた。その笑い声は変な嫌味が無くて、僕も思わず笑ってしまった。それからとりとめもない話を、彼女がタバコを吸い終わるまで続ける。
「ねえ、今日は自由行動でしょ?家で飲み直さない?今夜はひとりで飲みたくないの」
そう言いながら彼女は俺と腕を組み、歩き始めた。断るのは気が引けたし、もう少しだけ彼女と一緒に居たい気持ちもあった。それから彼女が暮らしているフラットに向かい、色んな話をした。彼女には将来を誓い合ったトーマスという恋人がいたらしい。帰宅前のひと時を過ごすあの公園で、同名の僕に会って、縁みたいなものを感じもう少し話したかったらしい。
しんみりした話はそれだけで、彼女はエルファシルの話を色々してくれた。エルファシルと比べられないけど、僕もエコニアの話をした。志願して以来、こんなに楽しい時間はなかったけど、初対面のシーハンとそういう時間を過ごせることが不思議だった。
「泊っていってトーマス。年上のいう事は聞くものよ」
そろそろ帰隊すべきかと考え始めた頃合いで、彼女はそう言いながら唇を合わせてきた。そのまま手をつなぎベットルームに向かう。僕はシーハンと一夜を共にした。初めての経験だったけど、彼女の体温は温かく、肌を合わせれば合わせるほど、愛おしい気持ちが溢れる。夢中になってしまったけど、負担になっていないだろうか?
いつの間にか抱き合ったまま眠ってしまい、朝を二人で迎えた。シーハンが作ってくれた朝食をゆっくり二人で食べ、別れ際に長めのキスをして、僕は原隊復帰すべく軍事宇宙港に向かった。外泊しても問題はないのだけど、なんとなく気恥しい。原隊復帰すると
「お、ちゃんと癒しを得たようだな。首元に男の勲章がついてるぜ」
とクラーク上等兵に言われた。急いで鏡に向かうと首元にキスマークがついていた。本当なら恥ずかしがるべきなのかもしれないが、あの夢のような一夜が夢でない証のような気がして、僕は嬉しかった。もし生きて帰れたら、もう一度シーハンに逢いたい。それに万が一のこともある。僕はターナーに表現を選んでシーハンの事を伝え、もしもの時は彼女に連絡してほしい旨をメールした。
エルファシルを出れば作戦行動に入る。次に連絡できる機会が何時になるか分からないから。でも出来たらもう一度シーハンに逢いたい。そんな思いに浸りつつも、いつの間にか乗船している輸送艦はエルファシルを離れ、ダゴン星域に進路をとった。。小さくなっていくエルファシルを見ながら、僕は今まで感じたのとは少し違
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