第13話 その頃 トーマス・ミラー
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宇宙暦723年 帝国暦414年 9月末
惑星エルファシル 軍事宇宙港
トーマス・ミラー
「良し、第552陸戦大隊、本部付は集まれ!」
本部付き小隊を取りまとめる軍曹の掛け声に合わせ、大隊本部付き小隊が軍曹の前に整列する。軍曹の指導は厳しいものだったけど、ちゃんとメリハリを付けてくれる。先輩のクラーク上等兵に言わせると、上官としては当たりの部類に入るらしい。
惑星エコニアで軍に志願してから、10か月の新兵訓練カリキュラムを終えた僕は、第552陸戦大隊の本部付きを拝命した。本隊は僕が新兵訓練に参加した頃から、ダゴン星域に属する惑星カプチェランカに派遣されている。ダゴン星域と言えばリン・パオ、ユースフ・トパロウル両元帥が帝国軍を撃滅したダゴン星域の会戦が有名だ。ただ、コルネリアス帝の大親征の際に惑星カプチェランカは帝国軍に占拠された。
豊富な天然資源を有しつつも、極寒の惑星である惑星カプチェランカ。大親征を跳ね返した同盟軍ではあったが、極寒の惑星は一年の半分は猛吹雪であらゆる軍事的活動を拒絶する。コルネリアス帝の功績を失うわけにはいかない帝国と、同じく建国以来、初めて帝国軍を撃破した会戦の場であるダゴンを失うわけにはいかない同盟は、猛吹雪の合間を縫うように地上軍に補給をしながら、血で血を洗う陸戦を繰り広げている。
「喜べ、大隊長であるシャープ大佐から軍資金を預かった。エルファシルでの補給が終われば、我々はダゴン星域に向かう。エルファシルでしっかり充電する様にとのことだ。小隊はこれより歓楽街へ侵攻する!任務はとにかく楽しめだ。ついてこい!」
軍曹を先頭に小隊が動き出す。僕たちは補充兵扱いだ。今は本部付きだけど、慣れた所で各小隊に配属される事になる。もっとも軍曹からは帝国語が話せる事と、在庫管理業務が出来る事から大隊付きのままになる可能性が高いと言われていた。
「やったなミラー。命の洗濯だ。しっかり楽しもうぜ」
クラーク上等兵が上機嫌で肩を組んでくる。もっとも僕を含め小隊全員が惑星カプチェランカが最前線の激戦区である事は理解している。新兵である僕を気遣って上等兵も敢えて明るく振舞ってくれているのだとなんとなく感じた。おそらく軍曹の馴染みであろう居酒屋に入り、飲み会が始まる。
「カンパーイ!」
皆でジョッキをぶつけ合い、エルファシルで生産されている地ビールを飲む。僕は17歳になったばかりで、本当は飲酒が出来ない年齢だけど、誰も細かいことは言わなかった。大皿に盛られた料理がどんどん出てくる。両親や生まれて間もない弟にも、分けてやりたいななんて事を思った。それに弟分のターナーともこんな場で一緒に過ごせれば良いなとも思う。
新兵訓練中は実家も含めて個人的な連絡は禁止されていた。訓練を終えた頃合いでタブレットを開くと
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