第12話 苦渋の決断
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バーラト系の富裕層はエリート意識のようなものがございます。そういう面でもターナーは良くも悪くも辺境星域の出身者ですから、誠心を尽くしてくれるでしょう」
ウーラント卿はターナーを迎え入れられる道が見えたからか、ホッとした表情をしている。クリスティン嬢は確かに貴族然とした容姿だ。交渉相手次第で婚姻を求められる可能性もあるだろう。だが、それでは亡命系で爵位持ちに仕えさせるのとあまり変わらない。
そういう意味でもウーラント卿は誠実ではあるが、非情な決断は出来ない方だ。世渡りも決してうまくない。ターナーを迎え入れたいと思われたのも、ご自身の力量を把握しておられるのもあるのだろう。スポンサーとしては、むしろ適性がある。変に口を挟まないだろうから、実務担当になるターナーはやりやすいはずだ。
「そうなると、テルヌーゼンまでの航海の合間に、ターナーにビジネス界の予備知識を、私からも仕込みましょう。零細資本の商船乗りですが、多少はバーラト系融和派の商会にも顔つなぎが出来ます。微力ながら後進の門出を応援させて頂きます。それに士官学校対策もおいおい考える必要もございましょう?」
「勿論だ。クリスティンの婿を兵卒で送り出すわけにはいかん。そうか、同盟の士官学校と言えば名門であろうしな。支援は惜しまぬつもりだ」
すべき事が見えて、ウーラント卿の表情は晴れやかだ。それに比べて俺はなあ。無理を聞いてくれたであろう井上に詫びもしなくちゃいけないし、航海士たちにも事情を説明しなきゃならない。しばらくはウーラント家のビジネス立ち上げを支援する事になるだろうが、亡命業務担当もまた探さなきゃならない。
だがうまくいけばウーラント商会との濃いつながりができるし、亡命系融和派とのつながりも持てるだろう。そうなればうちにもメリットはある。その為にはターナーに頑張ってもらってしっかり立ち上げをしてもらわないとな。
「おお、忘れておった。ターナーも信頼できる年上の相談相手が必要であろう。キャプテンさえ良ければ、ターナーの後見人になってもらいたい。もちろんクリスティンとの婚約の後で正式に依頼するつもりでいる」
笑顔のウーラント卿が、俺の肩に触れながら話しかけてくる。成功すればこっちも見返りが大きい。それにターナーを放り出すような真似は出来ないし、関わった亡命者がちゃんと同盟で成功しているともなれば、エンブレム号の評判も良くなる。もちろん二つ返事でお受けした。
ん、ちょっと待てよ。クリスティン嬢とターナーの気持ちはどうなんだろうか?まぁクリスティン嬢はターナーに好意を持っている感じはあったが、家族の為に仕送りするのが楽しみのターナーは、自分が結婚することなんて考えたことがあるんだろうか?でもなあ、亡命者とは言え帝国騎士から婚約を望まれたら断れないよな。それによくよく考
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