暁 〜小説投稿サイト〜
カーク・ターナーの憂鬱
第12話 苦渋の決断
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の見込みも高いですが、失礼ながらウーラント卿はビジネスの場でのご経験はあまりないでしょう。そういう意味でもターナーのような人材は必要でしょう。なんとなく、表情からお察ししておりました」

お互いジンバックを口に含む。ここのジンバックは確かに美味しいんだが、今回ばかりは美味しくは感じなかった。俺にとっても苦渋の決断だが、ウーラント卿は更に悩んだことだろう。そこまで考えて、帝国騎士という階級に思い至った。彼らはあくまで仕えている主君なり上役達の決断に従って動く存在なのだ。爵位持ちの当主なら、これくらいの判断は顔色を変えずに行うだろう。そして経験がないだけでなくウーラント卿ご自身が、もしかしたら誠実すぎるのかもしれなかった。

「ならば、私が考えたこともお見通しだろうな。ただ、こんな都合の良い話を考えることが許されるのだろうか。ユルゲンは見た目も悪くない。誠実な性格だし才覚もそれなりにあるだろう。だが、軍人としての適性は残念ながらあるまい。命の奪い合いをするには心根が優しすぎる。ウーラント家の為にビジネスの立ち上げをさせた上に、嫡男を守るために軍に志願させる......」

そこまで言うと、ウーラント卿はグラスを手に取り、ジンバックを一気に飲み干した。

「帝国でならお家の為でまかり通る。だが同盟の価値観ではどうなのか?お家の為に自分の夫を軍に捧げる。しかも憎からず思ってもおろう。それを知った時、クリスティンがどう思うか......」

「それは状況次第でしょう。ビジネスがうまく立ち上がり、ターナーも軍で功績を上げて昇進する。そんな未来ならクリスティン嬢もご不満には思われないのでは無いでしょうか?そんな未来を掴めるかは、ウーラント卿ご自身と見込んだターナー次第ではあります。それに、このまま航海士の道を進んだとしても、徴兵のリスクはあるのです。
入植を理由にターナーの父親は徴兵免除となっていますから、徴兵される可能性はむしろ高かった。航海士を目指していたのも、半分は徴兵時に戦死しやすい陸戦隊を避ける意図もあったでしょうから」

そう言いながら俺もジンバックを飲み干す。いつの間にやらターナーを引き抜かれる事を受け入れている自分がいた。俺みたいな独立商人に頭を下げ、悩みを吐露するウーラント卿にほだされた訳じゃない。実際ターナーにとっても大きなチャンスだ。初期投資の原資が準備されていて自分で考えたビジネスプランを実際に立ち上げる。大商人の家にでも生まれないと、こんなチャンスは得られない。

「であれば、テルヌーゼンに着いた段階で、婚約させてしまった方が良いだろう。ビジネスを立ちあげる段階ではこちらが交渉も不利であろう?婿入りや嫁にと交渉材料を出されるのは避けたい所ではある」

「そうされるのがよろしいでしょう。同盟には身分がないとは言え、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ