第11話 緊張の商談
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根を張るには、消去法でバーラト系融和派につながるしかないのも確かだ。とは言え具体的な成功イメージが持てないと不安は消えない。分かっていても決断するのは難しいだろうな。
「ここからは私見なのですが、もし私がウーラント卿のお立場なら、どうビジネスを立ち上げるかを考えてみました。お話してもよろしいでしょうか?」
船長に指示されたのは概要の作成までだ。でもさ、一応商会に勤務してたしそれなりの資本を持ってビジネスを始められるのって恵まれてるんだ。多くの平民は会社勤めをしながら資本と人脈をつくって独立するんだから。俺にそんな幸運は訪れないだろうけど、尚更だからこそ考えてみたかった。ウーラント卿の了承を得て、話を進める。
「亡命系融和派との伝手を活かしながら、バーラト系融和派のエリアで入り込む隙のあるビジネスと言うと、それなりの経済レベルの消費者がいるエリアでの、帝国風の食材の生産が良いと考えました。最有力はバーラト星系の惑星テルヌーゼン。士官学校を始めとした軍教育施設が集中し、バーラト系だけでなく少数とは言え辺境系・亡命系も生活する惑星です」
俺は念のために用意していた資料に切り替えて説明を続ける。
「惑星テルヌーゼンの不動産業界の雄、ウォーリック商会の会長は、帝国の美術品の収集家でもあります。失礼ながら持ち込まれた美術品のうち、価値の高いものを交換材料に郊外の広めの農場を手に入れます。そこで農作をしつつ、牧畜・酒造も行い、亡命系融和派の家業を継げなかった若者たちに帝国風の食材と地ビールを生産させます。比較的軍人の多いエリアですから、戦争中の相手国の食材を食らう、酒を飲み干すという行為は、士気を高める意味でも好まれるでしょう」
ウーラント卿の反応も上々だ。別に帝国風の料理を出す必要はない。使われている食材や酒が帝国に関する物。ビジネス界や政界ではそこまでニーズはないかもしれない。でも軍人にはニーズはあるだろう。軍人が顧客に多いテルヌーゼンなら、ビジネスとして成立する可能性は高かった。
「うむ。そこまで青写真を用意されて決断できねばウーラント家の名誉に関わる。亡命の件はエンブレム号にお願いすることとしよう。少し細部を相談したい。キャプテン佐三、カウンターに付き合ってもらえるかな?ターナー君はクリスティンたちの相手をお願いできれば幸いだ」
そうだよな。選択肢は限られていてもその先が見えなければ決断は厳しいよ。本職から見ればつたないかもしれないが、自分なりに考えて良かった。カウンターへ向かうウーラント卿と船長の道を開ける様に、俺は椅子から立ちあがる。二人が部屋から出て行ったあとは、昨日フェザーン観光をした際に撮った写真を交えながら、クリスティン・ユルゲンの三人で、フェザーンの印象や商船での生活の話をして過ごした。
二人が戻るま
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