第10話 ドラクールでの再会
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」
お父様が問いかけてきますが、どこか心が浮ついていたのを見透かされたようで気恥しく。私は紅茶をお願いしました。ユルゲンはノンアルコールカクテルを頼んでいましたが、円卓の中央にともされた蝋燭の灯も相まって、すごく美しく見えます。次のオーダーでは私もカクテルと頼もうと思います。
この場の雰囲気がそうさせるのか?お父様はウーラント家の先行きに関してお悩みな事を、吐露されました。すべては分かりませんでしたが、亡命してまで貴族社会の端である帝国騎士にこだわるべきなのか?これから向かう自由惑星同盟では、才覚次第で平民でも商船持ちにもなれる社会です。
姉バカかもしれませんが、ユルゲンは天才ではないかもしれませんが、勉強も良くでき、何より優しい心持ちです。時に同僚と貶めあう事もある貴族社会には正直向いているとは思えません。ただ、帝国で貴族制に慣れ親しんだ私たちにとって、階級が存在しない社会と言うのは未知も相まって不安が残ります。先に亡命された方々が、帝国のような貴族制を踏まえた社会をつくられたのも、ある意味、その不安が無視できなかったのでしょう。
「お寛ぎの所失礼します。お約束を頂いておりましたキャプテン佐三でございます」
「お世話を担当しております。カーク・ターナーでございます」
お父様と色々と話していると、男性の声が響きます。視線を向けるとお父様がお話していた商船の船長と見覚えのあるオレンジ色の髪の少年が、入口に控えていました。
「ウーラント・フォン・グスタフだ。今日はよろしく頼む」
「長女のクリスティンと申します」
「嫡男のユルゲンと申します」
お父様が応じるのに合わせて名乗りながら改めて確認する。間違いない、あの方だ。ユルゲンも気づいたのだろう。さりげなくターナー様に手を振っている。小声でお父様にターナー様が昨日お助け下さった方だと伝え、視線をもどす。何か不都合があったのかしら?ターナー様はユルゲンがいたずらが発覚した時によくする表情に似た表情を浮かべておられた。
でも、ウーラント家はきっと大丈夫。親切にして下さったターナー様ならきっと良いアドバイスを下さるはず。それまで感じていたもやもやした不安が晴れていくような気がした。視線を向けるとユルゲンがさりげなく右こぶしを差し出そうとしている。さすがにこの場ではまずいでしょう。さりげなくユルゲンの手を制して、私たちは席に着きました。
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