第10話 ドラクールでの再会
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味でも話を聞いておいて損はないと考えていてな」
「承知しました。ユルゲンの将来の為にも、お話を色々とお聞きいたしましょう。私も至らないなりに、励みますわ」
状況をすべては理解してはいないだろう。ただ、分からないなりに励もうとするクリスティンを儂は誇らしく思った。確かに亡命する以上、あらゆる事を学びなおす必要があるだろう。亡命するにあたって大切なことを、こんな歳になって娘に教えられるとは......。儂もまだまだよな。
宇宙暦723年 帝国暦414年 8月末
酒場ドラクール 防音個室
クリスティン・フォン・ウーラント
部屋を抜けだして小さな冒険を終えた私とユルゲンだったが、部屋を抜け出したことが発覚してしまい、お父様から久しぶりにお説教を受けました。ただ、部屋に閉じこもっているのも確かに良くないとお考えになり、翌日から出かける際には私たちも同席させる判断をされました。家族そろっての外出など久しぶりです。
それだけでも嬉しいのに、昨日見たフェザーンの街並みは、今日も私には新鮮に映ります。帝都とはどこが違うのか?疑問に思いました。確かに帝都では禁止されている高層建築もそうですが、一番の違いは、街を行きかう人々の活気でしょうか?皆様笑顔で、それだけで感じる印象も明るくなります。
「たまには三人で歩くのも良かろう」
お父様に続くように、ユルゲンと手をつなぎながら歩みを進めます。往来を整理する標識が赤になると、立ち止まることになるのですが、その度にユルゲンはお父様に右こぶしを差し出して、あの方が教えてくれた同盟流の挨拶をせがみます。余程気に入ったのでしょう。
まだ小さなユルゲンですが、私を守れるようになると目の前で約束してくれました。嬉しい気持ちもありましたが、母を亡くして以来、ユルゲンの母親代わりを自認している私としては、ユルゲンが誓いを守れるように支えていこうと心に決めています。
「うむ、ここだな」
目的地に着いたのでしょう。お父様は重厚なドアを開けると、私たちに入る様に促します。店内に入ると、活気があった店外とは別世界のようでした。静かな店内はさりげなく帝国の物とは違う音楽が流れ、従士のような制服を着た男性が、カウンターの向こう側でグラスを磨いています。その立ち姿がなんとも様になっています。
抑えられた照明を磨き上げられたグラスが反射し、まるで星空のようでした。もっとも初めて宇宙を体験した時は、とにかく急がねばならず、どこか不安が付きまとい、冷静に振り返れば美しかった光景も、楽しむことはできませんでした。
父に促されるようにカウンターから先に進み、がっしりとした造りのマホガニーの円卓に、同じく造りの良い黒革のソファーが備え付けられた個室に腰を落ちつけます。
「折角だ。カクテルを試してみるか?
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