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カーク・ターナーの憂鬱
第10話 ドラクールでの再会
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イク公、リヒテンラーデ侯、ケルトリング伯。どなたを頼るか?と言う感覚が近いやもしれぬ。どの閥につながる商船で入国するかで、ウーラント家が属する閥が決まるのが暗黙のルールになっておるらしい」

「先に亡命されたお家の方々を頼りませんの?昨日、私たちを助けてくださった方もオルテンブルク家が後援する学校でマナーを習ったと言っておられましたが」

「それなのだがな。今から向かう同盟では本来は階級のない社会なのだ。オルテンブルク家を始め、亡命された方々を取りまとめる為に帝国のような貴族制を布いている惑星もある。ただ大部分はそうでもないのだ。それにフェザーンが出来たことで、亡命系と呼ばれる方々は経済的にもダメージを受けているらしい。我らが頼ったところでどこまでご支援いただけるか分からんのだ」

どこまで理解できたのか分からんがクリスティンが頷きながら紅茶のカップを手に取った。これはあまり解っておらんのだろうな。ただ、帝国騎士であったウーラント家で、貴族社会における一般教養はともかく、政治的な視点での分析は分不相応だ。分からぬのも無理はないか。

「それにな。わざわざ苦労して同盟に向かうのだ。ユルゲンが身を立てる上でも、帝国風の価値観に敢えて染まるのがよいのか?同盟で身を立てるなら、価値観も同盟に染まった方が良いのではないかと悩んでおるのだ」

「そうですわね。あの方も同盟の方でしたが、困った私たちを無償で助けてくれました。精神的には騎士に通じる部分がありましたし、ユルゲンの将来を広く考えるのも良いかもしれませんわね」

あの方か......。道に迷った所を助けてもらったらしいが、敢えてお互い名乗らずに済ませたらしい。確かに道に迷う貴族子弟など、フェザーンでは厄介事でしかないだろう。こちらもまだ方針が決まらぬ以上、身元を明かしたときにどうなるか分からん。とはいえ、助けてもらったのも事実。いつか正式に礼をすべきだろうが、フェザーンを発ってしまえば、それも適うまいが。

亡命貴族と言っても、ウーラント家は帝国騎士の家だ。政争に巻き込まれたとは言え、難なく亡命できたのは逆に言えば帝国騎士の一人や二人、どこに行こうが構わないという判断もあったはずだ。亡命系に属せば、ユルゲンの才覚に関係なく、閥の中でも下位に処されるだろう。敢えてわざわざそこに飛び込むべきか?
クリスティンも我が子ながら美しく育っている。亡命系に属せばせいぜい侍女になり、仕えたお家のどなたかのお手付きになるのが関の山だ。亡き妻が残してくれた儂の宝に、亡命してまでそんな将来を用意するのは嫌だった。

「それでな。今から会うのは同盟でもバーラト系に属している商船の船長だ。平民ながらゼロから商船を持つまでになり、それなりにやり手だとも聞いておる。方針を決めるにあたって、判断材料を集める意
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