第10話 ドラクールでの再会
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宇宙暦723年 帝国暦414年 8月末
酒場ドラクール 防音個室
グスタフ・フォン・ウーラント
「父上〜」
嫡男であるユルゲンが右の拳を差し出してくる。我が息子ながら小さな拳だ。優しく右の拳を合わせると、何が楽しいのか?笑顔になった。昨日覚えた同盟流の挨拶らしいが、だいぶ気に入ったらしい。朝から何度も拳を差し出してくるが、ユルゲンの小さな手を見るたびに、何とかこの拳が一人前の大きさになるまでは、守ってやらねばと感じていた。
「それにしてもお父様、私たちも同席して宜しかったのでしょうか?」
「大丈夫だ。書類上の亡命は既に終わったからな。これからは、同盟に向かうにあたって乗船する商船主との商談になる。それに出かけておる間に抜け出すのではないかと気に病むくらいなら、同席させた方が気が楽だ」
「まあ、お父様。もう抜け出すような事は致しませんわ」
フェザーンに到着して以来、亡命申請や情報収集で多忙だった私は、仕方のない事ではあるが、滞在先のホテルに2人を残して駆け回っていた。ただ、落ち着いて考えれば、ホテルの一室に閉じこもったままと言うのも、慣れないフェザーンという事を加味すれば、それなりに負担だったのだろう。
戻ってみればもぬけの殻の部屋に唖然とし、どうしたものかとロビーに向かうと、ちょうど二人が入ってくる所に出くわした。フェザーンは自治を認められているとは言え、名目上は帝国領だ。最悪の事も想定したし、つい取り乱してしまい、長めに説教をしてしまった。
「分かっておる。ただ、部屋におるのが気づまりなのも確かであろう?同席しても構わぬことなら一緒にいた方が、ユルゲンの為にも良かろう」
ユルゲンの為と言うと、クリスティンは納得したのか、外出の際にするすまし顔に戻った。クリスティンも13歳となり、どんどん亡き妻に似てきたがまだまだ子供っぽさが抜けぬな。儂だけなら同盟なりフェザーンなりの場末で朽ち果てても構わぬ。だが、妻が残してくれた2人の事を考えれば、なんとかウーラント家が同盟で根を張れるようにしたい。その思いが、尚更今後の方針を決めるにあたって儂の決断を鈍らせていた。
「でもお父様。亡命が受け入れられた以上、どの商船で向かっても同じではなくて?」
紅茶でのどを潤したクリスティンが疑問を口にする。ユルゲンはだいぶ気に入ったのだろう。アップル・フレーズルを嬉しそうに飲んでいる。この酒場ドラクールは商人たちにとって縁起の良い場所だと聞いた。先行きが読めない状況だが、少しでも良縁に恵まれてほしいと言う思いで、子供にも飲めるカクテルをと頼んで用意してもらった。もともとリンゴジュースは好物であったのも良かったのだろう。
「うむ。向かう予定の同盟もな、必ずしも一枚岩ではないようだ。例を挙げるとすればブラウンシュヴァ
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