第9話 商売の都
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ようにオレンジの髪の少年は両手を上げた。なんとなくだが、信じても良いように感じた。
「道に迷ったの。ホテル・シャングリラまで戻りたいのです。私は......」
「あ〜。名乗らなくてよいよ。俺は同盟人だから、名前を聞いちゃうとそれはそれで厄介な事になるかもしれないからな。ホテル・シャングリラか、少し距離があるな」
そう言いながら手元のタブレットを操作する少年。すると私たちがいた路地に、自動運転タクシーが停車した。
「君はともかく、弟君が歩くには少し距離があるからね。乗った乗った」
そういうと私たちを後部座席に乗せ、彼は運転席に乗り込んだ。
「出身は同盟の中でもド田舎でね。自動運転システムがなかったから、運転席に乗らないと落ち着かないんだ」
そんな会話をしているうちにタクシーが動き出す。その後も、フェザーンか同盟で生活するなら情報端末が必須になると教えながら、彼のタブレットを渡してくれた。
「画面の中心が現在地、そして赤い矢印がホテル・シャングリラだよ。他にもいろんな機能があるけど、情報端末があれば、道に迷うことなんてなかった。フェザーンで過ごすか同盟で過ごすかでメーカーが代わるからね。そういう事が決まったら、購入することをお勧めするよ」
そんな話をしているうちにホテル・シャングリラに到着した。
「ありがとうございます。助かりました」
「良いんだ。亡命系には多少の恩があるからね。それよりも弟君。亡命して色々大変だろうけど、帝国でも同盟でも、男性は女性を守れって習う。ご両親からそういうことは言われない?」
「うん。お母さまは亡くなっちゃったけど、お父様からはそう言われるよ。今日はできなかったけど」
お母さまの事があったから会話を遮ろうと思ったけど、ユルゲンは素直に答えていた。
「そうか、だったら尚更、お姉さんを守れるようにならないとな。約束の挨拶だ」
そういってオレンジの髪の少年が拳を差し出す。戸惑うユルゲンに
「同じように拳をだしてぶつけて。同盟流の挨拶だよ」
そう言われたユルゲンが恐る恐る拳をぶつけると、オレンジの髪の少年は『男同士の約束だ』と言いながら笑顔でユルゲンの頭を撫でた。どこかユルゲンも嬉しげだった。
「んじゃ、またどこかで」
そう言い残すと少年はタクシーに乗り込み走り去ってしまった。何だろう。変に胸がドキドキする。
「姉さま、お腹すいたよ」
そんなユルゲンの声で現実にもどり、私たちはホテル・シャングリラのロビーに向かった。部屋を抜け出していた私たちを探していたお父様に、大目玉を食らうのも、ユルゲンと毎晩していたお休みの挨拶が、この日から頭を撫でるのでは無く、拳を合わせる同盟流の挨拶?になるのはまた別の話だ。
そして一緒
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